判決文の読み方
本判決文を読むにあたり専門的な観点から解釈するためには以下の点についてご注意ください。
まず、判決の既判力は主文の範囲内において有効であり、本件の磁気回路が「おおよそ磁気漏れしていない」という事実認定
(著しく誤っていますがそれは置いといて)には、判決の効力は及びません。
したがいまして、類似した回路図であっても製造番号が異なり磁気漏れが確認されれば再び新たな判断となりますが、その際、明らかな磁気漏れを伴う「漏れインダクタンスの値が大きい」磁気回路には本件主文の効力が及ぶかどうかは、再び審理の対象となり、裁判所の判断が異なる
可能性がありますので、この点を良くご理解の上お読みいただきたいと思います。
端的に言うと・・・・
本判決は、特段の理由もなくイ号証が採用されていません。ということは、いったいこの裁判は何に対して行われた判断なのでしょうか?
架空の物体?!
即ち、判決文主文を先に決め、それに都合の良い証拠だけを採用したということですが、よりによってイ号証が不採用になっています。そうとははっきり書いてありませんがよく読めばわかります。
これは事実認定を恣意的に操作することによって判断を自由に引き出そうとした典型的な例として参考にして下さい。日本の裁判には良くあるスタイルです。
主文に都合の良い部分だけを集めて事実認定を行っているために、天動説判決になっていますが、事実認定が自然科学の摂理と矛盾していたらどうなるのでしょうか?
日本の民事訴訟法においては、事実認定の誤りについては何の対世効もなく、また、既判力もないとされています。したがって、判決は事実認定の誤りに対しては何の責任もありません。
これが論文発表だったらどうでしょう?STAP細胞みたいな事件になりますね。
真実に対する扱い(責任)が論文と判決とでは大きく異なります。
そのようなところから、日本の裁判においてはわざと事実認定を誤ることにより、自由な判断を引き出そうとすることが頻繁に行われます。そのような日本の裁判の特性を良くご理解の上で、本判決文をお読みいただきたいと思います。
経験則違反について
原則として裁判所の判断は経験則に違反してなりません。学術的・工学的論理との矛盾や社会常識、政府刊行物による規制・規約などが経験則に含まれます。
ところで、本判決文には明らかな(専門的)経験則違反が含まれますが、多少の専門的経験則違反は専門的経験則と判断せずに解釈の問題であるとしてスリ替えることにより、経験則違反でないという構成が採られています。(専門的経験則違反はバレなきゃいい?!)
民事訴訟法における「事実認定」とは?!
事実認定とは主張された要件事実をどう認定するかの問題です。事実の黒白がつけば事件の90%以上は片づくと言われています。しかし現実の事実認定とは主文の法律的効果を目的に便宜的に行われるものであって、必ずしも工学的事実と一致する義務はないのです。これは「訴訟法的な事実認定」と呼ばれています。真実と事実とは違うモノ。
このURLの「どっちの料理ショー」の記述がたいへんに参考になるでしょう。
日経ものづくり - Tech-On! 日本の裁判所は真実を追究する機関か
恣意的に行われる事実認定
判決文を学術論文に例えれば、事実認定は実験データ、判決理由は考察、主文は結論に相当するといえます。
もし学術論文において、捏造されたデータをもとに学会発表を行えば信用は失墜し、学者としての生命は終わるでしょう。
しかし、裁判においてはどうでしょう。
しばしば恣意的な証拠採用、即ちデータの改ざんに相当することが行われます。それをもとに法律判断が行われたとしても裁判官としての生命が終わることはありませんが、裁判の権威や信用は確実に毀損されていくでしょう。
判決文は大きく分けて「事実認定」部分とそれを基礎とした「法律判断」部分とから構成されています。
どこからどこまでが事実認定に該当し、どこからどこまでが法律判断に該当するのかを見極めて読みましょう。


◆H14.10.31 東京地裁 平成13(ワ)7153 特許権 民事訴訟事件

平成13年(ワ)第7153号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 平成14年8月28日

判       決

原      告  株式会社テクノリウム
訴訟代理人弁護士   松 田 政 行
同          早稲田 祐美子
同          齋 藤 浩 貴
同          谷 田 哲 哉
同          山 元 裕 子
同          松 葉 栄 治
同          早 川 篤 志
同          糸 井 千 晴
同          吉 羽 真一郎

被      告  富士電機イー・アイ・シー株式会社
訴訟代理人弁護士  中 村   稔
同         熊 倉 禎 男
同         辻 居 幸 一
同         渡 辺   光
補佐人弁理士      合 田   潔

主       文

1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由

第1 請求
被告は,別紙物件目録記載の放電管用インバーター回路を輸入し,製造し,販売し,販売の申し出をしてはならない。
被告は,その占有する上記放電管用インバーター回路を廃棄せよ。
被告は,原告に対し,金3450万円及び内金750万円に対する平成13年4月6日から,内金2700万円に対する平成14年1月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
本件は,原告が被告に対し,別紙物件目録記載の放電管用インバーター回路(以下「被告製品」という。)を輸入するなどの被告の行為が原告の有する特許権を侵害するとして,輸入等の差止め等と損害賠償の支払を求めた事案である。
前提となる事実(当事者間に争いがない。)
(1) 原告の有する専用実施権
原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その発明を「本件発明」という。)につき専用実施権を有している。
(ア) 発明の名称   放電管用インバーター回路
(イ) 出願日 平成5年8月30日
(ウ) 登録日 平成10年1月9日
(エ) 特許番号 第2733817号
(オ) 特許請求の範囲 別紙「特許公報」写しの請求項1欄記載のとおり(以下同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。)
(2) 本件発明の構成要件
本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。
連続した一本の棒状コア2と,
一次巻線4と,二次巻線6とを有し,
C1 該一次巻線と二次巻線は該棒状コアのまわりに,該コアに沿って隣接して並置された関係に巻回され4乃至6
C2 その結果,該二次巻線は該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有する,
漏洩磁束型の昇圧トランスの
E1 疎結合部分より生じる誘導性出力と
E2 二次側回路に生じる寄生容量と
E3 の間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする
放電管用インバーター回路。
(3) 被告の行為
被告は,業として,被告製品を輸入し,販売している。
(「争いのない事実」についての認定が明らかにおかしいでしょう。たったこれだけ?実は、これ以外に被告主張や自白、被告証拠の中から原告も否認しない「争いのない事実」(主要事実)で判断の基礎としなければならないものが、数多くありますが、それらが全く見落とされています。意図的に無視されています。特に「漏れインダクタンス」に関する数値←準備書面参照!被告原告ともが一致して主張した事実に関して事実認定から外すってことやってもいいものですかね?常識的に考えて弁論主義に反してます!)
争点及び当事者の主張
(1) 被告製品の構成
(原告の主張)
  被告製品の構成は,別紙物件目録記載のとおりである(なお,争いのある部分に下線を付した。被告の認否欄の記載についても同じである。)。
(被告の認否)
別紙物件目録の「被告製品の構成」の説明文3,5は,以下のとおりであり,同説明中6,10のすべて及び7の下線部分は否認する。
C25,C26,C16,C9はデカップリングコンデンサであり,直流と交流を分離するためのものであり,バンドパスフィルター回路における下限の周波数帯域を決定する。
T1は昇圧トランス(周波数65kHzで結合係数約0.962)であり,PW1はその一次巻線であり,SW1はその二次巻線である。
別紙物件目録第1図は,別紙被告主張第1図のとおりである。被告主張第1図は,被告製品の部分だけを図示したものである(なお,被告が構成の説明を認める範囲では,別紙物件目録の第1図と,被告主張第1図とでは,被告製品の回路構成の記載,記号等は同一である)。
別紙物件目録のその余の記載は認める。
(2) 本件発明の構成要件と被告製品の構成との対比
構成要件Aの充足性
(原告の主張)
構成要件Aの「連続した一本の」とは,EI型のコアやEE型のコアのように一次巻線と二次巻線とのコアの間が分かれていないという意味と解すべきである。
 これに対して,被告製品は,連続した一本の棒状の形態を有する中心コア2を有するから,構成要件Aを充足する。
 確かに,被告製品においては,中心コア2にロ字状の外部コア3を接合させているが,この外部コア3を接合することによっても昇圧トランスT1の磁束は閉塞磁束性とはならず,依然として極端な漏洩磁束性を有したままであり,被告製品の外部コア3は単なる付加物にすぎないのであるから,被告製品は構成要件Aを充足する。
(被告の反論)
被告製品は,以下のとおり,本件発明の構成要件Aを充足しない。
(ア) 解釈
構成要件Aにいう「連続した一本の棒状コア」とは,文言どおり,一本の細長い棒状のコアを指すと解すべきである。
本件明細書の「発明の詳細な説明」欄には,以下のとおりの記載がある。
「また,従来の放電管用インバーター回路ではコアにEI型或いはEE型の形状を採用しているが,該コア形状ではコアの体積がそのインバーター回路全体に占める割合が大きく,その回路の小型化の障害となっている。しかし,閉塞磁束型のトランス構造を採用する限り,昇圧トランスの小型化には限界がある。そこで,コア形状と磁気回路を見直すことによって昇圧トランスの小型化を実現する必要がある。」(本件明細書4欄17〜24行)
「漏洩磁束型トランスはトランス自体に電流制限効果があり,その出力は誘導性となるためにチョークコイルと同様の効果があるが,これをさらに進めてコア材を棒状とし,昇圧トランスの形状を棒状の漏洩磁束型トランスとすることにより極端な漏洩磁束効果を持たせると,・・・」(本件明細書4欄45行〜末行)「図4及び図5は昇圧トランス1を極端な漏洩磁束型とした場合の外形を示しており,昇圧トランス1は円柱状の形状としてある。その他,角柱状などに形成することもできる。」(本件明細書5欄50行〜6欄3行)「この場合,放電開始電圧1000V,定常放電電圧300V,電力2Wの冷陰極管用インバーター回路を設計においては,昇圧トランス1の形状は直径4.8mm,長さ35mmとなり,従来のEE型或いはEI型のコアの(本件出願当初の)昇圧トランスを用いた同仕様のインバーター回路に比べて非常に小型なものとなる。」(本件明細書6欄18行〜23行)
「また,昇圧トランスの組立は,巻線後ボビンに丸棒状コア11を挿入するだけなので量産上も有利な形状となる。」(本件明細書6欄23行〜25行)(これ実施例でしょう?!つまり被告は最狭義説主張と言うことですね。時代遅れな・・・・)
  上記aないしcの記載から明らかなとおり,「連続した一本の棒状コア」は,「漏洩磁束型の昇圧トランス」(構成要件D)を形成するために必須であって,昇圧トランスの小型化,量産化にとっても有用なものであり,棒状のコアに他の形状の外部コアを組みあわせたものを含まないと解すべきである。
(イ) 対比
被告製品のコアは,棒状の中心コア2とロ字状の外部コア3からなるものであり,棒状のコアのみからなるものではなく,構成要件Aを充足しない。
  原告は,被告製品のロ字状の外部コア3は単なる付加物にすぎないと主張する。しかし,乙6号証の実測結果によれば,被告製品において,ロ字状の外部コア3を取りはずした場合の中心コア2の結合係数は,周波数(65kHz)で,0.437であるのに対して,外部コア3を取り付けた場合の結合係数は,0.962であって,外部コア3により2倍以上結合係数を上昇させているのであり,このことからも外部コア3が単なる付加物でないことは明らかである。
(以下、
被告原告ともが一致して主張した事実があるが採用していない?!
1.同時に被告は漏れインダクタンス値265mHであることを主張している。これを原告も認める。
2.また.被告は冷陰極管インピーダンス約100kΩであることを主張している。これを原告も認める。
3.またさらに、被告は動作周波数65kHz乃至68kHzであることを主張している。これを原告も認める。
4.容量成分の合計値は27pF(うち15pFの部分のみ自白)。これも、原告が認める。
さあ、高校の物理の教科書から共振周波数を計算してみよう!→計算値

上記1から4までの事実を事実認定したら、原告敗訴の判決文を書くのはかなり苦労するだろうけれど、それでも法律判断で勝負するのが正義感がある裁判官というものですよ。)
構成要件C2の充足性
(原告の主張)
 被告製品においては,二次巻線は一次巻線と磁気的に密結合した一次巻線近傍の密結合部分と,一次巻線と磁気的に疎結合した一次巻線から離れた疎結合部分とを有するから,構成要件C2を充足する。
なお,被告製品の二次巻線における密結合部分は,中心コアに沿った一次巻線の近傍にある二次巻線であり,疎結合部分は中心コアに沿って一次巻線から離れた部分にある二次巻線である。
(被告の反論)
被告製品の昇圧トランスの二次巻線においては,「密結合部分」と「疎結合部分」という区別はなく,被告製品は構成要件C2を充足しない。
構成要件Dの充足性
(原告の主張)
 被告製品のトランスは,漏洩磁束型の昇圧トランスであるから,構成要件Dを充足する。
 確かに,本件発明の漏洩磁束型の昇圧トランスは,極端な漏洩磁束型であるが,漏洩磁束型のトランスが,一次巻線と二次巻線の結合係数は0.5に満たないものに限定されると解すべき根拠はない。
 (被告の反論)
 構成要件Dは,極端な漏洩磁束型の昇圧トランスを意味し,漏洩する磁束が漏洩しない磁束よりも大きく,一次巻線と二次巻線の結合係数は0.5に満たないものに限られると解すべきである。
 これに対し,被告製品は,一次巻線と二次巻線の結合係数は0.962という高い値であり,被告製品のトランスは,結合係数の高い閉塞磁束型である。したがって,構成要件Dを充足しない。
構成要件E1ないしE3の充足性
(原告の主張)
 被告製品を液晶パネル(別紙物件目録第1図のLCD PANEL。以下記号は別紙物件目録第1図記載のものを指す。)に接合し,液晶ノート型パーソナルコンピュータの通常使用の明るさまでこの液晶パネルバックライトに内蔵されている冷陰極管(DT1)を点灯させると,被告製品は漏洩磁束型の昇圧トランス(T1)となり,当該漏洩磁束型昇圧トランス(T1)の疎結合部分より生じる誘導性出力(Le1)と二次側回路に生じる寄生容量(Cw1,CS1)との間で構成する共振回路の一部となる。したがって,本件発明の構成要件E1ないE3を充足する。
(被告の反論)
(ア) 構成要件E1について
 構成要件E1にいう「疎結合部分より生じる誘導性出力」とは,要件C2に規定された「二次巻線の疎結合部分」より生じる誘導性出力(正確にいえば,これは「出力」ではなく,「負荷」である。)であり,「二次巻線の密結合部分」より生じる誘導性出力又は昇圧トランスの全体もしくは二次巻線の全体より生じる誘導性出力ではない。
 そして,原告の主張によっても,本件発明の構成要件E1にいう「疎結合部分より生じる誘導性出力」との対比において,被告製品の二次巻線のどの部分から漏洩する磁束を対象としているかも明らかではないから,被告製品はE1の構成要件を充足しない。
(イ) 構成要件E2について
構成要件E2にいう「二次側回路に生じる寄生容量」とは,二次巻線間に発生する巻線間寄生容量と放電管の周辺に生じる寄生容量を指す。本件明細書の発明の詳細な説明の記載から明らかなとおり,本件発明においては,従来有害とされていた寄生容量を逆に活用し,構成要件E1の「疎結合部分より生じる誘導性出力」とで構成要件E3の「直列共振回路」を動作させるものである。
 これに対して,被告製品においては,「二次側回路に生じる寄生容量」を利用していない。すなわち,本件明細書の発明の詳細な説明においては,「昇圧トランス21の二次側寄生容量23,蛍光管24の周辺に生じる寄生容量25は通常数PF程度の値を有する。」(本件明細書3欄28行〜31行)と記載されているとおり,二次側回路に生じる寄生容量はわずかなものであり,かつ,変動しやすいので,被告製品においては,15pFという高い容量を有するコンデンサC12を備えることにより寄生容量の影響を極力排除しており,コンデンサC12の存在からみても,被告製品において「二次側回路に生じる寄生容量」を利用していないことは明らかである。
(ウ) 構成要件E3について
 構成要件E3にいう「共振回路」とは,「直列共振回路」(本件明細書5欄15行など。)であり,この回路は,直列共振周波数で動作させ,「放電管に高い放電電圧を給電する」ことにより「電流波形が正弦波に近くな」るものである(本件明細書4欄41ないし44行,5欄12ないし21行,同30ないし36行,同43ないし47行,6欄13ないし17行,同34ないし40行)。そして,「直列共振回路」とは,共振周波数により,回路を流れる電流及びコンデンサの両端電圧を最大化する回路である(乙2)。本件明細書の発明の詳細な説明によれば,本件発明において「直列共振回路」を形成するのは,極端な漏洩磁束型の昇圧トランスの昇圧作用の不十分さを補強して,高い放電電圧を放電管に給電するためであり,この「直列共振回路」を動作させるために二次側回路に生じる寄生容量が必須の構成要素とされている。
 これに対して,被告製品においては,電圧,電流を最大化する直列共振回路は存在しない。(天下の富士電機が?!富士電機ですよ!モーターの世界の磁気解析では世界でもかなり権威のある富士電機がこれを直列共振回路でないと主張!?しかし、直列共振回路の定義は経験則の範疇に入るものであるから定義は一義的に存在し、裁判所が解釈するべき問題ではない。しかしなんと、この裁判官は原告に経験則の実証を求めた?!→計算値原告原告による経験則の主張解釈の主張と捉えた(スゲ替えた)わけだ。こういう個所が何箇所もある。)
被告製品の昇圧トランスは,結合係数が高いので,このような回路により電圧を上げる必要はない。
(即ちこの主張によって自らのトランス/インバータ回路は非漏れ磁束変圧器で構成されていることを主張したわけだし、それを裁判官に誤認させた。見事だ!よろしい。弁論主義の快挙と言える。
それならば武士に二言はないはず。一生非漏れ磁束型インバータ回路作って売ってろ!
後になってのこのこと「漏れ磁束型インバータ回路」を作って来たら嘘がばれるがどうする?)
(2) 間接侵害
(原告の主張)
  被告製品を液晶パネルに接合して通常のノート型パーソナルコンピュータの使用に耐える明るさに当該液晶パネルのバックライトを点灯させた場合,本件発明の構成要件すべてを充足する。
  被告製品は,液晶ノート型パーソナルコンピュータ専用の放電管用インバーター回路であるから必ず液晶パネルに接続してバックライトを点灯させるものである。
(被告の主張)
  否認する。
(3) 損害額
(原告の主張)
ア 輸入数量
 平成13年1月20日から平成13年4月5日までに被告が輸入し譲渡した被告製品は,合計75,000台は下らない。
 さらに,被告は,平成13年4月6日から平成13年12月31日まで被告製品を輸入しており,追加された輸入数は,合計270,000台は下らない。
イ 実施料相当額
  原告は,本件特許発明の輸入実施許諾料として1台につき100円としている。
  したがって,平成13年4月5日までの原告の実施料相当の損害額は,75,000台×100円=7,500,000円を下らない。
  さらに,平成13年4月6日から平成13年12月31日までの原告の実施料相当の損害金は,270,000台×100円=27,000,000円を下らない。
ウ したがって,原告は被告に対し,合計34,500,000円の損害賠償及びこれらに対する遅延損害金を請求する。
(被告の反論)
争う。
第3 争点に対する判断
被告製品の構成要件Aの充足性について
(1) 構成要件Aの解釈
本件発明の構成要件Aにおける「連続した一本の棒状コア」とは,連続した一本の棒状コアのみからなるものを意味し,棒状のコアの周辺等に磁路を形成するコアを設けたものを含まないと解すべきである。
 その理由は,以下のとおりである。
本件明細書の記載
本件明細書の「特許請求の範囲」欄には,「連続した一本の棒状コア(略)を有し」と記載され,「昇圧トランス」に「一本の棒状コア」を組みあわせの構成の一つとして含んでいれば足りるのか,「棒状コア」のみを構成とするものでなければならないかは,その記載からは直ちに明かであるとはいえない。そこで,本件明細書のその他の部分の記載を参照する(つまりここで特許法第70条の第2項を発動するわけだが、特許法第70条の第1項では技術的な意義が明確な文言はそのまま判断することになっている。70条の第2項の安易な濫用である。また審査基準も参照すべきである)
(原判決が最高裁判例違反ではないかというご指摘、ありがとうございました)リパーゼ判決→,最高裁→
(ア) 発明が解決しようとする課題の欄に,「また,従来の放電管用インバーター回路ではコアにEI型或いはEE型の形状を採用しているが,該コア形状ではコアの体積がそのインバーター回路全体に占める割合が大きく,その回路の小型化の障害となっている。しかし,閉塞磁束型のトランス構造を採用する限り,昇圧トランスの小型化には限界がある。そこで,コア形状と磁気回路を見直すことによって昇圧トランスの小型化を実現する必要がある。」と記載されている(本件明細書4欄17ないし24行)。(磁束が漏れない非磁気漏れ型から磁気漏れ型へ変更するという意味だね。証拠出しただろう。無視か。)
(イ) 作用の欄には,「漏洩磁束型トランスはトランス自体に電流制限効果があり,その出力は誘導性となるためにチョークコイルと同様の効果があるが,これをさらに進めてコア材を棒状とし,昇圧トランスの形状を棒状の漏洩磁束型トランスとすることにより極端な漏洩磁束効果を持たせると,一次巻線近傍の二次巻線は漏洩磁束トランスとしての効果を有し」と記載されている(本件明細書4欄45行ないし5欄1行目)。(二次巻線途中から漏れ出す特殊なトランスになるという意味だね。これも証拠出しただろう。ここでも無視か。)磁気漏れ実験→
(ウ) (なお,実施例の欄には,「昇圧トランス1を極端な漏洩磁束型とした場合の外形を示しており,昇圧トランス1は円柱状の形状としてある。その他,角柱状などに形成することもできる。丸棒状コア11の一方の終端に昇圧トランス1のベース巻線12を巻き,隣接して一次巻線であるコレクター巻線13を巻く。さらに,その隣に巻く二次巻線14は,一次巻線の近傍15より巻き始め」と(本件明細書5欄50行ないし6欄6行),「昇圧トランス1の形状は直径4.8mm,長さ35mmとなり,従来のEE型或いはEI型のコアの昇圧トランスを用いた同仕様のインバーター回路に比べて非常に小型なものとなる。また,昇圧トランスの組立は,巻線後ボビンに丸棒状コア11を挿入するだけなので量産上も有利な形状となる。」と(本件明細書6欄20ないし25行目),それぞれ記載されている。)(実施例から技術範囲を限定するのは最狭義説/認識限度論と呼ばれる。平成8年均等論判決以降はタブーのはず。それに特許出願をした1993年の背景のことを全く考慮していない。PC黎明期でFAXの時代である。後知恵排除を標榜する飯村裁判官としては自らの言葉に背いていないか?)
(エ) 以上の記載に照らすならば,本件発明における「昇圧トランス」は,「連続した一本の棒状コア」に巻線を施し,磁路の両端を解放したものであって,その中心コアの周囲に磁路を形成するコア部を備えたものを含まないものを指し,このような構成によって,昇圧トランスは,極端な漏洩磁束型になり,非常に小型化することができたと解するのが素直である。そうすると,「連続した一本の棒状コア」とは,連続した一本の棒状コアのみからなるものを意味し,棒状のコアの周辺等に磁路を形成するコアを設けたものを含まないと解すべきである。(明細書に
【0020】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発明によれば、寄生容量を共振回路の一部として利用することによって、従来より高い駆動周波数を採用することができるようになり、昇圧トランスを小型にすることができる。

と書いてあるんだから、高い駆動周波数を採用することができるようになったから、と解釈するのが普通に素直というものでしょう。即ち、明細書の記述さえ採用しない。ではその理由は?なにか言い分けでも並べてほしい。無視したまま通り抜けるのはずるいぞ!)
出願経過
また,本件発明の出願経過を参酌すると以下のとおりである。すなわち,証拠(乙3ないし5,10ないし15)によれば,本件特許権出願の経緯につき,以下の事実が認められる(なお,以下の記載のうち,出願及び補正の経緯については争いがない。)。
(ア) 出願当初明細書における「特許請求の範囲」は,「放電管用インバーター回路の二次側回路を高周波の給電回路とし,二次側回路に生ずる寄生容量を誘導性バラスト或は漏洩磁束型トランスの誘導性出力との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」と記載され,「連続した一本の棒状コア」部分は記載されていなかった。
(イ) 平成8年6月4日,拒絶理由通知が発せられ,同通知により,審査官から,二次側回路の寄生容量や,トランスのリーケージインダクタンスを共振回路の一部とする共振形インバータは周知であり,このような周知の共振形インバータを放電管の点灯に使用することは,広く行なわれている旨を指摘された。(だからなに?二次側共振+密/疎結合+力率改善効果の前例があったら教えてくれよ。周知ではない、と主張したのに無視か。)
(ウ) これに対して,出願人(原告代表者)は,特許請求の範囲(請求項1)を「放電管用インバーター回路の二次側回路を高周波の給電回路とし,昇圧トランスを棒状の漏洩磁束型とし,二次側回路に生ずる寄生容量を漏洩磁束型トランスの誘導性出力との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」とし,「トランスを棒状の漏洩磁束型とし」との記載を加える補正を行った。(つまり、特許庁に却下された補正であって、この参酌には何の意味もない。それは特許審査実務上の審査基準を見れば明らかであるが、なんと、裁判所は特許庁の審査実務には拘束されない、という反論があるそうである。だからといって・・・、発明者は審査基準に拘束されて明細書を書いているんだから、それは不公平でしょ。)さらに,出願人は,上記手続補正と同時に提出した意見書において,「漏洩磁束型トランスはトランス自体に電流制限効果があり,その出力は誘導性となるためにチョークコイルと同様の効果があるが,これをさらに進めてコア材を棒状とし,昇圧トランスの形状を棒状の漏洩磁束型トランスとすることにより極端な漏洩磁束効果を持たせると,一次巻線近傍の二次巻線は漏洩磁束トランスとしての効果を有し,同時に一次巻線から遠端の二次巻線はチョークコイルとしての効果を有する」旨を述べた。(つまりこの記述からは二次巻線が重要だと読み取れますよね?鉄粉の塊のコアとどっちが大事だか、普通ならわかるはず。)
(エ) 平成9年7月15日,拒絶理由通知が発せられ,同通知により,審査官から,漏洩磁束型のトランスを用いて,寄生容量を考慮した公知技術(米国特許第4698741号,乙15)の存在を指摘された。上記米国特許第4698741号は,気体放電装置用の高効率高圧電源に関する発明であり,その特許明細書には,「コア材料は,通常,何年もテレビのフライバック回路に使用されている種類のフェライトである。」「このコアは好ましくは,合計で約0.1インチから0.2インチの1つまたは複数の空気ギャップを組み込み,それにより負荷が大きくなる(抵抗が小さくなる)際に端子出力電圧を低下させる働きをする漏れインダクタンスを形成する。」との各記載がある。(それで?二次側共振+密/疎結合+力率改善効果の前例があったら教えてくれよ、って言っても結局は前例がないんだろう?争点を闇に葬ったつもりか!)
(オ) これに対し,出願人は,同年9月2日,明細書の特許請求の範囲(請求項1)を,「第2 事案の概要,1 前提となる事実」(1)(オ)のとおりに補正した。(こちらの補正が本命の補正であって、特許審査実務上最も大切な部分である。「疎結合/密結合の構成の記載を補正して特許査定された」と書かれるべきであって、それを書かないのは明らかに裁判所として後ろめたさを感じながら書いている。不正直な判決文であり、肝心な部分がわざと不透明になるように書かれている。特許審査実務を完全に無視しているわけだから、裁判官自身が作為的な判決文であることを自覚していると考えられる。特許審査過程に反する=専門的経験則違反。)
(カ) 出願経過及び公知技術に照らすならば(って、出願経過にも公知技術はない。作為的事実認定。無理に一本の棒状コアにこだわるから不自然な判決理由になる。),本件発明の構成要件Aの「連続した一本の棒状コア」は,中心コアの周辺に磁路を形成するコアを設けたものを排除することは明らかである。
小括
以上のとおり,@明細書のその他の記載に照らすと,昇圧トランスは,一本の棒状のコア(中心コア)に巻線を施し,中心コアの磁路の両端を開放したトランスであって,中心コアの周囲に磁路を形成するコアを備えないことにより,昇圧トランスを極端な漏洩磁束型とするとともに,トランスを小型化することを可能にしたものを指すと解するのが相当であること(明細書に明確に「周波数を高くすることができるようになり、小型化できた」とはっきり書いてあるでしょう。判決は明細書に拘束されないって・・?何のための明細書ですか?)A出願経過及び公知技術に照らすと,本件発明の構成要件Aの「連続した一本の棒状コア」の意義について,中心コアの周辺に磁路を形成するコアを設けたものを排除すると解すべきことが明らかである。
 そうすると,構成要件Aにいう「連続した一本の棒状コア」とは,昇圧トランスが連続した一本の棒状コアのみで構成されているものを意味すると解すべきである。
(2) 被告製品との対比
対比についての判断
被告製品におけるトランスは,一本の棒状の形態を有する中心コア2の周囲に,ロ字状の外部コア3が存在し,この外部コア3は,中心コア2に接合されている(争いがない)。
 そうすると,被告製品においては,昇圧トランスが連続した一本の棒状コアのみで構成されたものではなく,棒状の中心コア2の周囲に外部コア3を有するものであるから,構成要件Aを充足しない。
原告の主張について
原告は,被告製品における外部コア3は,中心コア2に対して付加的なものにすぎないから,被告製品の中心コアは,構成要件Aの「連続した一本の棒状コア」に当たると主張する。しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。
すなわち,証拠(乙6,16,17)によれば,以下の事実が認められる。

ここから以下が事実認定と呼ばれる部分です。
判決文は事実認定とその“認定された事実”を基礎とする法律判断とに分けられますが、事実認定が真実と等しいとは限りません。法律用語上は“事実”というのはあくまでも手続き的に認定されたものを言い、一般的用語で言われる“事実”とは意味が違います。一般的用語で言うところの“事実”に関しては真実という用語を用いた方が適切でしょう。
日本の民事訴訟の最大の汚点はこの事実認定にあり、「手続き的に認定された事実」は真実と異なってもなんら問題はないとされています。
法律判断を操ることに行き詰まった場合、事実の方を曲げて認定してしまえば法律判断の方は何とでも操れることになります。
安易に判断を導く方法がこの事実認定いじりであり、恣意的、捏造何でもありというのがまかり通っているわけです。
本事件は事実認定を曲げた結果、近年の天動説裁判になってしまっています。
判決   :異端の者を破門に処する
事実認定:宇宙の中心には地球がありその周りを太陽が周っている
法律判断:正教の解釈に反した
判決というものは、すべからく法律判断でなされるべきであって、事実認定を操って判断を導こうとすることは正義に反することです。
明細書や審査過程外の証拠は米国では「内部証拠」と定義され、明細書外の証拠を「外部証拠」と定義されるわけだが援用される理由が外部証拠だけって・・・
何のための明細書なのか、何のための審査過程記録なのか・・・
その上、援用された外部証拠が二つとも恥ずかしいぐらいの大きな間違い。
特許解釈の大原則は、
第一に明細書。第二位に審査過程などの内部証拠。そしてやむをえない場合に限って外部証拠の援用を受けるのだが、理由中の判断に外部証拠が採用されるならともかく、mainの事実認定に外部証拠だけしかないとは、自由な判断にも程があるというもの。
(ア) 被告製品における一次巻線と二次巻線の結合係数(2つの巻線の磁気的結合の度合を示す係数)は,0.962であるのに対し,外部コアを取り除いた中心コアのみの結合係数は,0.437である(測定周波数65kHz)。また,被告製品における結合係数を様々な周波数で測定したところ,周波数10kHzないし70kHzで,被告製品のコア全体の結合係数は,0.900ないし0.976であるのに対し,外部コアを取り除いた中心コアのみの結合係数は,0.452ないし0.437である。(明細書に「結合係数」とは一言も書いてない。ここでも明細書の意味ってなんだか疑問になる。「ないし0.976」は100%明らかな経験則違反。JISのハンドブックに反する。ここは0.9と書かれなければならない。0.9を基礎にして判決文を書かなければならない。また、磁束漏れの指標は結合係数ではないことは工学的に明らか。これも経験則違反である。)
(イ) 被告製品における外部コアの透磁率は空気の3000倍以上であり,棒状の中心コアの周囲に外部コアを設けた場合,大部分の磁束は,空気中を通らず,コア材で作る磁気回路を流れてループ回路を形成するため,結果的に巻線間の磁気的結合係数が大きくなる。
事実認定されたのは初透磁率μiacの数値である。初透磁率は実効透磁率μeとは違うとちゃんと主張したでしょう!!聞いてないんですかね。遺漏か、恣意的か?!わざと嘘の方を事実認定をするんだから参った。
知らなくて間違えたのではない。何らかの目的をもってわざと間違えたのである。

(結局、外部コアの実効透磁率μeは3である。被告提出の証拠から計算できてしまう。3桁も事実認定を誤っている。まあ、結論を導くために裁判官が恣意的にわざとやっていることだから呆れかえるほかはない。裁判官に真実を指摘しても、「日本の裁判って、これが普通だよ。だから何?」って感覚なんだろう。)


 そうすると,被告製品における外部コア3は,中心コア2のまわりに巻回された巻線に発生した磁束について,中心コア2の周辺に磁路を形成する役割を果たしており,この外部コア3が存在することにより,コアが棒状の中心コアのみで構成されたトランスとは,異なる磁路が形成され,結果として磁束の漏洩の程度に影響を与えていると認められる。したがって,被告製品における外部コア3が,中心コア2に対して,単なる付加的なものであるということはできない。外部コアの寄与率μeがたったの3倍ならば、単なる付加物でしょう。とにかくここは「寄与率3倍」に基づいて判断されなければならない部分であろう。その重要な事実認定を1000倍も間違えて認定することにより好き勝手な(法律)判断を導く。事実認定の方を操れば(法律)判断を操れるということをまさに体現する部分である。
さらにおかしいのは、明細書には「透磁率」など一言も書いてないことである。明細書に記述してあっても読まない、それどころか明細書に書いてないことを引用して来る。それでは何のために明細書があるのかわからないだろう。
結局、心証優先(エスタブリッシュメント優遇、本事件においては富士電機)に便宜を図るためなら明細書外からでもどこからでも言い訳理由を引いてくるということである。つまり、何でもアリの事実認定ということだ。
本事件の場合、事実を真実のとおりありのままに事実認定したら被告はかなり不利になる。法律判断だけで被告有利に持っていくのはかなり困難だったのだろう。そこで追い詰められたからといって、事実認定の方をいじくってしまうというのは最低である。

事実認定の(ア)と(イ)の順番がひっくりかえっているが、こういう些細な事柄に関しても露骨に恣意的である。

結局、
1. μiacとμeを恣意的に取り違え、3000と認定する。(経験則違反だが無視)
これに基づき、磁束漏れの指標は(被告主張)結合係数kか(原告主張)漏れインダクタンスLsか、という双方の主張の中から、
2. 結合係数を事実認定
主張の対立は、準備書面中にある。準備書面は判決文に反映されず、また、5年後には破棄される。準備書面が破棄されれば、恣意的な事実認定の証拠は消滅する。
3. 結合係数に基づいて判断を行う。

ここで、(イ)を3000でなく3であると仮に事実認定したらどうなるか?!
(イ)から(ア)の順で事実関係を認定して行くのはさすがに不自然で事実認定できなくなるだろう。こういうところにもわざとらしさが表れている。
もしこれが自然科学法則に逆らっていないのであれば、(ア)から(イ)へでも、(イ)から(ア)へでも矛盾なく認定していけるはずである。

飯村敏明裁判官にも正義とプライドがあるのであれば、事実認定はありのままに認定し、法律判断で勝負したらどうだと言いたい。
法律判断は裁判官の専管事項であるが、正しい事実認定を受ける権利は訴訟当事者のものである。裁判官が好き勝手な事実認定を行う権利をこのまま許してはならない。
結局、特許審査基準も審査実務も、明細書も無視される特許裁判って何なのでしょうか?
これほど明細書の記載内容を無視した判断をされたら、特許明細書って何の意味もないですね。
それに技術的に意味なく、さらに間違っている外部証拠しか事実認定で採用できないとは。 

第4 結論
 よって,その余の点を判断するまでもなく(このフレーズが登場したら、手抜き判決の場合の常套句と考えよう。そして、特許法70条の第2項による限定理由の参酌、技術的本旨のスリ替えがセットになっていないかどうか、厳重にチェックすると良い。),原告の請求はいずれも理由がない。(即ち、都合の悪い内部証拠類は無視して、工学的に誤った外部証拠を援用して理由中の判断(即ち経験則違反)を述べてしまっている。そこがなにしろ気分悪い。経験則違反の判決理由はエンジニアに対する拷問、精神的汚染物である。これなら最狭義説*で判決文を書いてくれた方がよっぽどすっきりする。最狭義説がいまどき許されるならばだが。)
*最協議説とは、特許請求範囲を、明細書に書かれた実施例に限定して解釈すること


東京地方裁判所民事第29部

裁判長裁判官    飯村敏明


裁判官 今井弘晃


裁判官 大寄麻代


制度運用と不適切な訴訟指揮について
この事件の審理が行われた昭和13年から14年にかけては訴訟指揮と制度運用に明らかな問題があったと言われる。特に飯村敏明裁判官の審理のやり方には本事件に限らず批判が多かった。
それは、裁判の迅速化を標榜するものの、現在のような集中審理などの制度運用の改善も行わないままに機械的に審理期間を切ることであった。そのために多くの審理が中途半端でめちゃめちゃなものになったと言われている。
飯村敏明裁判官は自分の審理期間の短さを再三自慢しているが、例えば、
アジア経済構造改革等支援事業専門家派遣実施報告書
でも、
(飯村)「かつては解決までに3年かかっていましたが、現在は平均15ヵ月(東京地裁では同12ヵ月)で短縮するなど、ずいぶん迅速になりました。その背景には特許法の改正もあり、裁判所の迅速な運用にむけた変化などがその理由です。」

とあるわけであるが、その実態は審理時間の機械的な打ち切りであり、乱暴な審理を受けた当事者の犠牲の上に立つ期間短縮であった。
このような飯村裁判官の自慢は内閣の司法制度改革推進本部で行われた知的財産訴訟検討会でも再三見受けられるのであるが、乱暴な審理の犠牲になった者にしてみれば、聞くたびにはらわたの煮え繰り返る思いがするのである。


経験則違反について

この判決文は「コアが閉じたものはおおよそ磁束漏れしない」という概念に立脚しており、本判決時点における当業者(トランス業界)の一般的な認識が「コアが閉じたものはおおよそ磁束漏れしない」 という概念であったことを強く立証しているものです。しかしながら、その判断が正しければ以下の写真に写っているものは幽霊か幻でなければならなくなります。
これは判決後に発明されたもので、EE型コアのトランスでありながら、二次巻線を工夫することによって漏洩磁束型トランスを実現しています。判決理由では「結合係数0.900ないし0.976」は漏洩磁束型トランスではないとしていますが、この判断はがやっぱりデタラメだったということですね。また、「ないし0.976」の部分は経験則違反が明らかです。
実際の裁判の審理中において、原告と被告が激しく争ったのは、イ号物件が漏洩磁束型トランスか否かでした。そして、それを判断するための指標が結合係数なのか漏れインダクタンス値なのかということでした。しかし、結合係数か漏れインダクタンス値かということで原告と被告があれだけ激しく争ったのに、この争点が全く判決文に反映されていません。
ここで、原告は漏れインダクタンス値が磁束漏れの指標であるという経験則を主張し、被告は磁束漏れの指標が結合係数であるという解釈を主張しました。
そもそも、経験則の主張と解釈の主張とは比較されるべき問題ではなくて、経験則に則った上で、解釈に対して釈明を求めるべきものです。
実際にはここで不適切な訴訟指揮が行われ、なんと、担当裁判官は原告に経験則の論証を求めたのです。
この場合の経験則とは即ち自然科学の摂理であって、当事者が論証するものではありません。疑問があれば裁判所自ら民訴法212〜218条に基づいて鑑定を行わなければならないものです。裁判所が予算をケチったのかどうかは知りませんが、裁判所が鑑定を行わないのであれば、裁判所は素直に経験則には従わなければならないものです。
実際、裁判所というところは、準備書面が最高裁の判例速報に載らない、公開されないことをいいことに、そういう重要な争点さえ闇に葬ろうとしてしまうところなわけで、全く不思議な世界であるとしか言いようがありません。

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本判決時点における当業者の認識について


新製品:磁気回路の閉じた漏洩磁束型トランス

上記の写真を見て下さい。一見磁路の閉じたトランスですが実は漏洩磁束型トランスです。共振型トランスと言います。このトランスの結合係数は0.98、つまり、ついに結合係数0.98の漏洩磁束型トランスができあがったわけです。これにより判決がいかにいいかげんなものか明らかになりましたね。発明者をナメると本当に怖いということを肝に銘じて下さい。いよいよ実用化が始まりましたが、これが普及すればするほど、裁判所の恥が白日に晒されることになります。共振型トランスの漏れ実験→
どうか、産業界の皆さんは、いまさら言を左右して、あるときは「磁束漏れは昔からあった」、そしてあるときは「磁束漏れはほとんどない」、などと、その場その場で二枚舌、三枚舌を使い分けるのはもうやめにして下さいね。
この写真にあるトランスって明らかに判決文と矛盾しますね。既に特許出願もしてありますので次回に事件が起きたときは関係者の皆さんで大いに悩んで下さい。
悩まないでいい方法は一つ。こんなんでも(結合係数0.98)大きく磁気漏れするってことを素直に認めることです!
我々は業界紙における地道な執筆活動を通じて漏洩磁束型インバータ回路に関する正しい知見の普及に努めて来ましたが、その結果、磁束漏れトランの設計指標が漏れインダクタンス値であることは仕様書にも反映されるようになり、いまやこの業界においての常識になりつつあります。
我々は世のため人のためにこれだけ働いて、それでプロフィットはなしですか?それが裁判官の正義というものなのでしょうか。発明者にプロフィットなしで働いてくれって?それではインセンティブが湧きませんよね。発明者はタダで安く使われるのが正しい。それが裁判官の心の中に宿る良心というものなんですね。

それと、漏れ磁束型トランスか否かが結合係数で決まるなんて素人みたいな意見書を書いたのは関東学院大学森安正司教授です。教授です。
乙16号証意見書→
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~moriyasu/

裁判官が工学的な間違い(専門的経験則違反)をしてもそれほど恥ずかしくないかもしれませんが、大学教授が工学的な間違いをしたらさすがに恥ずかしいのではないでしょうか。
この報告書はページの大半が磁束漏れの指標を「漏れインダクタンス」であると式で示しながらも最後にとって付けたように1行「結合係数である」と書き加えてある。本当にその1行が浮いている。
大学教授として、工学に携わる者として、こんなことして恥ずかしくないか?


控訴→