平成14年(ネ)第6167号

 

 

 控訴人第二準備書面

 

 

控訴人  株式会社テクノリウム

被控訴人 富士電機イー・アイ・シー株式会社

 上記当事者間の標記特許権侵害差止等請求控訴事件につき、控訴人は下記のとおり陳述を準備する。

 

       平成1536

 

東京高等裁判所 第3民事部 御中

控訴人訴訟代理人 弁護士 中島 敏

同 補佐人    弁理士 飯田 伸行

 

 

 

 


1.本件発明の構成要件Aについて

  原判決は、本件発明の構成要件Aについて、

    「本件発明の構成要件Aにおける「連続した一本の棒状コア」とは、連続した一本の棒状コアのみからなるものを意味し、棒状のコアの周辺等に磁路を形成するコアを設けたものを含まないと解すべきである。」

 と認定し、これを根拠として被告製品が本件発明の技術的範囲に属しないと判示した。

  原判決は上記認定の根拠として出願経過および明細書の記載を挙げるが、いずれについても原判決の判断は誤りである。

(1)出願経過

  本件特許発明の出願時の請求項1およびその後の出願経過における補正は次のとおりである(下線が訂正部分)。

  出願時(平成5830日)

    「【請求項1】放電管用インバーター回路の二次側回路を高周波の給電回路とし、二次側回路に生ずる寄生容量を誘導性バラスト或は漏洩磁束型トランスの誘導性出力との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」

 

(2)平成881日付補正(乙第13号証)

  出願人は、平成8523日付「拒絶理由通知書」が

    「2次側回路の寄生容量や、トランスのリーケージインダクタンスを共振回路の一部とする共振形インバータは、たとえば引用文献1,2に示されるように周知であり、このような周知の共振形インバータを放電管の点灯に使用することは、本願出願前に広く行われていたものと認められる。」

 のように指摘したことに対し、【請求項1】を次のように補正した。

    「【請求項1】放電管用インバーター回路の二次側回路を高周波の給電回路とし、昇圧トランスを棒状の漏洩磁束型とし二次側回路に生ずる寄生容量を漏洩磁束型トランスの誘導性出力との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」

 

(3)当該拒絶理由が引用した公知文献(1)特開平4-127409号公報(甲第59号証)および同(2)特開昭59-32370号公報(乙第11号証)に開示されたトランスは、乙第11号証第3回に示すCC型コアのみであり、棒状コアは開示されておらず棒状コアと外部コアとの組合せも開示されていない。

 

 

 

 

【乙第11号証第3回】

  したがって、出願人が「1本の棒状コア」のみからなる昇圧トランスに限定することは、公知技術を回避するために何ら要請されておらず、また、原判決指摘の意見書(乙第14号証)の記載を参照しても、出願人が上記のような限定を行って本件特許を取得したと解する余地はない。

 

(4)平成992日付補正(乙第5号証)

  出願人は、平成972日付「拒絶理由通知書」が

    「引用文献1:漏洩磁束型トランスを用い、寄生容量を考慮している。

     この請求項1には、請求項1記載の構成が放電管点灯回路のバラストとどのような関係にあるのか規定されておらず、引用文献1記載のものと格別な差異を有するものとは認められない。」

 と指摘したことに対し、【請求項1】を次のように補正した。

    「【請求項1】連続した一本の棒状コアと、一次巻線と、二次巻線を有し、該一次巻線と二次巻線は該棒状コアのまわりに、該コアに沿って隣接して並置された関係に巻回され、その結果、該二次巻線は該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有する、漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」

 

(5)当該拒絶理由通知が引用した公知文献USP4,698,741号(乙第15号証)に開示されたトランスも、そのFIG.1に示すEE型コアのみであり、棒状コアも棒状コアと外部コアの組合せも開示されていない。

 

 

 

 

【乙第15号証FIG.1】

  したがって、出願人が「1本の棒状コア」のみからなる昇圧トランスに限定することは、公知技術を回避するために何ら要請されておらず、また同時提出の意見書(乙第4号証)の記載を参酌しても出願人が上記のような限定を行って本件特許を取得したと解する余地もない。


 

(6)明細書の記載

  原判決は、明細書「特許請求の範囲」について、

    「本件明細書の「特許請求の範囲」欄には、「連続した一本の棒状コア(略)を有し」と記載され、「昇圧トランス」に「一本の棒状コア」を組みあわせの構成の一つとして含んでいれば足りるのか、「棒状コア」のみを構成とするものでなければならないかは、その記載からは直ちに明かであるとはいえない。」

 と述べる。

  しかし、本件特許発明の請求項1の記載は、本準備書面(4)項のとおりであって、

    上記「連続した一本の棒状コア(中略)を有し」

 の部分も、「連続した一本の棒状コアを有する」ことが構成要件Aの技術内容であり、本件発明が上記構成要件Aと他の構成要件の結合によって成立していることを明確に規定している。構成要件Aが「連続した一本の棒状コアを有する」ことであるか、「一本の棒状コアのみ」であるか、記載からは直ちに明らかであるとはいえない」との判示自体が誤ったものというべきである。

 

(7)つぎに、明細書には、本件発明が「解決しようとする課題」として

    【0007】原判決判示のとおり「閉塞磁束型のトランス構造を採用する限り、昇圧トランスの小型化には限界がある。そこで、コア形状と磁気回路を見直すことによって昇圧トランスの小型化を実現する必要がある。」

  との記載がある。さらに、本件発明が解決しようとする具体的な課題として、

    【0004】寄生容量までを含めた新たな回路設計を行なうことによって、より高い駆動周波数の使用を可能にし、昇圧トランスの一層の小型化を進める必要がある。

 旨が課題として明記されていた。

 

(8)「課題を解決するための手段」の項には、上記課題を解決するための手段が具体的に明示され、これには本件発明特許請求の範囲第1項に記載された構成、すなわち

    【0008】「本発明は以上の如き観点に鑑みてなされたものであって、連続した一本の棒状コアと、一次巻線と、二次巻線を有し、該一次巻線と二次巻線は該棒状コアのまわりに、該コアに沿って隣接して並置された関係に巻回され、その結果、該二次巻線は該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有する、漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部とした放電管用インバーター回路【甲第21号証】

 を本件発明に必須の構成として採用したことが記載されている。

 

(9)また、本件発明が上記の構成を採用したことによって実現される作用として、明細書の【作用】の項には

    【0009】二次側回路に生ずる寄生容量と極端な漏洩磁束型昇圧トランスの誘導性出力とにより共振回路を形成することによって、従来有害とされていた寄生容量を逆に活用して放電管に高い放電電圧を供給する。

    【0010】「チョークコイルの誘導成分を二次側回路に生じる寄生容量またはこれと並列に接読された補助容量によって打ち消してやることにより直列共振回路を構成し、放電管に高い放電電圧を給電する。

    【0016】「線間に生じる寄生容量と放電管周辺に生じる寄生容量などの二次側回路に生ずる寄生容量が誘導性の二次側出力と共振回路を構成し、放電管に高電圧を給電する。」

 ことが述べられている。

 

(10)さらに、上記の結果得られる本件発明の効果について、明細書の【発明の効果】の項には、次のように述べられている。

    【0020】「【発明の効果】以上の説明により明らかなように、本発明によれば、寄生容量を共振回路の一部として利用することによって、従来より高い駆動周波数を採用することができるようになり、昇圧トランスを小型にすることができる。

 

(11)したがって、本件発明の明細書の記載によっても、本件発明は「連続した一本の棒状コアのみを有するもの」と限定解釈する余地ある記載は全く存在しない。本件発明は構成要件Aを有し、かつ他の各構成要件を結合すること、とくに構成要件C記載の密結合部分と疎結合部分を有するように構成することにより、従来有害とされていた寄生容量を活用してこれを共振回路の一部として利用して、従来より高い駆動周波数を採用することができ、昇圧トランスを小型にすることができた発明であることが明らかである。したがって、原判決判示のごとく、上記構成要件のうち、要件Aにのみ着眼して、これを「連続した一本の棒状コアのみからなるもの」と限定解釈し、かかる限定を付したことによってはじめて本件発明の課題が解決され、作用効果が奏されたと解することは明細書の記載を参照しても明らかに誤りである。

 

(12)構成要件Aが「一本の棒状コア「のみ」からなるものを指すと限定することは、本件明細書の記載ならびに出願経過のいずれを参酌してもできないことは上記したとおりである。

  本件特許発明の構成要件A,「連続した一本の長い棒状コアであること、すなわち一次巻線と二次巻線の間にギャップなどの磁束漏れ機構を設けておらず、途中での接合や隙間がなく連続していることにおいて従来の技術(E1EE型コア等)と異なる本件特許発明特有の構成を為すものである。

  また、公知のE1EE型コアは軸足が短く、したがって二次巻線スペースが十分でなく、この点でも本件発明と異なる。

 

(13)被控訴人製品が「連続した」一本の長い棒状コアを有することにより、本件特許発明の構成要件Aを充足することは明らかである。

  原判決は、被告製品「外部コア3が、中心コア2に対して、単なる付加的なものであるということはできない」ことを構成要件Aに該当しない理由に挙げるが、被控訴人製品が「連続した」一本の長い棒状コアを使用し、これが有意である限り、「外部コア」が「付加的」であるか否かは構成要件該当性に関係がないことである。

  また、原判決は、被控訴人製品における一次巻線および二次巻線の結合係数、ならびに外部コアの透磁率を挙げるが、これらは被控訴人製品においても中心コア(「連続した一本の長い棒状コア」)が放電管に高電圧を給電する有意不可欠が構成として使用されていることを否定する理由とはならない。なぜならば、

 

  結論から言えば、構成要件Cとともに支配的な作用を持つものは漏れインダクタンス値である。

  本件特許発明においては漏れインダクタンスが直列共振回路を構成し、それが放電管に高電圧を給電するための重要な働きをなしている。

 その作用に対して結合係数も透磁率も数値的関連性を持たない。

  棒状コアは二次巻線を多く巻き上げ、漏れインダクタンスの値を大きく確保するためのものである。

  また外部コアの存在は漏れインダクタンスの数値を減らすものではない。

  

2.被控訴人製品が、本件特許発明の構成要件BCを充足することについて争いはない。

 

3.構成要件Cについて

 

  被控訴人製品の二次巻線においても、一次巻線と磁気的に密結合した一次巻線近傍の密結合部分と、一次巻線と磁気的に疎結合した一次巻線から離れた疎結合部分とを有し、密結合は結合が強いために漏洩磁束型の昇圧トランスとしての働きをなし、遠端は疎結合となるためチョークコイルと等価となる。これは【図1】に示すとおりであり、【甲第17号証】により証されている。

 【図1】は【甲17号証】写真6に基づき、これに詳細な数値的解析を加えたものである。

 

 


テキスト ボックス:  
【図1】【甲17号証】写真6に基づき、これに詳細な数値的解析を加えたもの


4.構成要件D「漏洩磁束型」について

  被控訴人製品も二次巻線において強い磁束漏れを発生させており、これは被控訴人製品の漏れインダクタンス数値が229.1mH乃至263.8mHである【乙第17号証】ことにより証されている。したがって、被控訴人製品が漏洩磁束型であることは明らかである。

  原判決は、65KHの周波数において被控訴人製品が高い結合係数を示し、また外部コアの透磁率が空気の3000倍以上であるとして、棒状コアのみで構成されるトランスとは異なる磁路が形成され、磁束の漏洩の程度にも結果として影響を与えていると判示するが、誤りである。

  けだし、被控訴人製品における上記漏れインダクタンス値は229.1mH乃至263.8mHであって、それは原判決にもあるとおり、

「それにより負荷が大きくなる(抵抗が小さくなる)際に端子出力電圧を低下させる働きをする漏れインダクタンスを形成する。」ものであることを示している。

結合係数kが大きいとは

 (Mは相互インダクタンス、Loは二次巻線の自己インダクタンス)

で表されるとおり、トランス三端子等価回路【図2】(【甲第34号証】第96頁)でいうところのM

即ち相互インダクタンスを表すものであって、負荷に対しては並列成分として働くものであるから端子間電圧を下げる働きを表すものではない。

テキスト ボックス:  
【図2】【甲第34号証第96頁】より

大切なことは(1-k)が漏れインダクタンスLeを示すことであり、

 (Leは三端子等価回路の漏れインダクタンス)

で示されるとおり負荷に対して直列の働きをして端子電圧を下げる成分である漏れインダクタンスLeに意味があるものであって、相互インダクタンスMには意味がないのであるから、結合係数の大小を論じることは意味がない。

また、透磁率とは磁性材の磁束の通りやすさを示す指標であって、その材料で構成されたトランスの総合特性を全て含めて計測した結果として、漏れインダクタンス値が229.1mH乃至263.8mHなのである。

透磁率が大きいことが結果として漏れインダクタンス値を小さくしていると証されているならともかく、そうではないのであるから、被控訴人製品が漏洩磁束型であることを否定する根拠とはならないのである。

 

5.構成要件E誘導性出力について、

  被控訴人製品においても、疎結合部分より誘導性出力を生ずることは、【甲第17号証】により明らかである。

 詳説すれば、

(1)トランスの磁束の一般論(【甲第8号証】203頁図9.17および【甲第10号証】49頁、図3.9乃至50頁)として

トランスの内部の磁束を解説すると次のようになる。

トランスの磁束は主磁束と、漏れ磁束から形成されている。

1)             主磁束(相互磁束)とは

【図3】の実線で示すように、一次巻線、二次巻線の両方を通り抜けている磁束のこと。

テキスト ボックス:  
【図3】 従前主磁束
主磁束はトランスの昇圧作用(一次側から入れた電圧が、二次側に高圧になって出てくること)に関係するもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2)漏れ磁束とは

テキスト ボックス:  
【図4】従前漏れ磁束
【図4】の破線で示すように、一次巻線だけ、あるいは二次巻線だけを通り抜けている磁束のこと。

漏れ磁束はトランスの昇圧作用には関係しない。

 

漏れ磁束は漏れインダクタンスを作る磁束のこと。

 

漏れインダクタンスとは「負荷が大きくなる(抵抗が小さくなる)際に端子出力電圧を低下させる働きをする漏れインダクタンスを形成する。」もの、即ち、漏れ磁束は昇圧作用には寄与しないで、電圧を低下させる働きをするものである。

 

 

(2)本件特許発明におけるトランスの磁束

主磁束も漏れ磁束も二次巻線の途中から漏れ出すのが特徴である。

これを図示すると以下のようになる。

 

1)             主磁束と密結合部

本件特許発明における主磁束(実線)は一次巻線を通り抜け、二次巻線のうちの一次巻線近傍に入り込む。

そして、二次巻線の途中から徐々に漏れ出す。これを【図5】に示す。

 

テキスト ボックス:  
【図5】 本件特許発明の主磁束
 


 したがって、二次巻線のうちの一次巻線近傍は主磁束が多いので密結合であり、密結合部は主磁束で構成されているので昇圧作用を持つ。

 【甲17号証】(【図1】)より、二次巻線のうち一次巻線近傍の二次巻線は位相の遅延が66°であり、位相関係は近いことが明確である。

 即ち、当該部分には主磁束の多くが二次巻線に進入しており、一次巻線に対して密結合である。

 

2)             疎結合部と漏れ磁束

 本件特許発明における漏れ磁束(破線)は二次巻線だけを通り抜けて、二次巻線の途中から漏れる。

 これを【図6】に示す。

 

テキスト ボックス:  
【図6】 本件特許発明の漏れ磁束
 


 漏れ磁束はチョークコイルと等価な「漏れインダクタンス」を形成するものである。

 また、二次巻線を通り抜けている漏れ磁束は一次巻線から離れた遠端部に行くほど多い。即ち、この部分から誘導性出力が生じている。

 

3)             被控訴人製品の磁束

 他方被控訴人製品においても、【乙第17号証】(【図1】)に証されるように、二次巻線のうち一次巻線から遠端の二次巻線の磁束位相は一次巻線の位相に対して115°遅延しており、主磁束は侵入していないと考えられ、ほとんどの磁束が本件特許発明の漏れ磁束により構成されている。

 即ち、二次巻線のうち一次巻線から遠端の二次巻線は、一次巻線に対して疎結合である。

 

4)             従前技術の疎結合部

 

テキスト ボックス:  
【図7】 従前疎結合部
 参考までに一般論であるが、【図7】に示すように、従前のトランスにおいては一次巻線と二次巻線との境目から磁束が漏れる。

 疎結合が生じている部分、即ち「疎結合部」は一次巻線と二次巻線との境目である。

 或いは、従前の漏れ磁束トランスの二次巻線は、「二次巻線全体が一次巻線に対して疎結合である。」とも言える。

 

    5)したがって、被控訴人製品においても疎結合部が一次巻線に対して離れた部分の二次巻線に形成され、本件特許発明の構成要件Eを充足することが【甲第17号証】(【図1】)より明らかである。

 

6.構成要件E寄生容量について

 

  被控訴人製品A1(【図8】左側点線内)、及び、最終製品としてDELL社製ノートパソコンに搭載された際に接続される液晶パネル(右側点線内)を含めて本特許発明の構成要件にかかわる部分を赤く示せば次のようになる。

テキスト ボックス:  
【図8】二次側回路に生ずる寄生容量
  

液晶バックライト寄生容量Cs1は【甲第22号証】実測により8pFの値を有することは明らかである。

また、被告も認めるように二次側の並列容量C12の値は15pFである。

また、巻線の寄生容量Cw1の値は2.7pFである。

したがって、これらの合計容量は約26pFである。

 

7.構成要件E共振回路について

  被控訴人製品(【図8】左側点線内A1)においても、疎結合部分より生ずる前記誘導成分を二次側回路により上記寄生容量により「打ち消し」、すなわち直列共振回路を構成し、これにより放電管に高い放電電圧を給電していることは【乙第6号証】、【甲第22号証】により明らかである。

  けだし、【図8】の共振回路を【図9】に簡略的に示し、L及びCで構成される直列共振回路の共振周波数を数値的に計算すると、

テキスト ボックス:  
【図9】【図8】の共振回路を簡略的に示したもの
 

         

となる。

 【被告準備書面(3)】より、被控訴人製品は62kHz乃至65kHzで動作させていると自ら述べているのであるから、共振回路が共振して、構成要件Eを充足していることは明らかである。

 

8.間接侵害について

  被控訴人製品A1は、【図8】に示すように、液晶ノートパソコンの液晶パネルを接合し、同液晶パネルのバックライトをノートパソコンの通常使用に適する明るさに照らすものであって、本件特許権に対する間接侵害を構成する。

 

9.再び構成要件Aについて

  以上述べたように、被控訴人製品は、外部コアを併用したにもかかわらず、「連続した一本の棒状コア」を有することにより、本件特許発明の構成要件BFを全て具備することになったものである。このことは、「連続した一本の棒状コア」を有することにより、外部コアの有無にかかわらず、本件特許発明の作用効果を実現することを示すものであって、したがって、本件特許発明の構成要件Aを「連続した一本の棒状コアのみからなるもの」と限定解釈することができない。

  原判決は、構成要件Aについての判断を誤り、さらに被控訴人製品が本特許発明の構成要件BないしFの全てを充足することについて一切判断せず、これによって結論を誤ったものというべきである。

以 上

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