特許侵害の説明

●特許侵害の現状

現在、液晶バックライト用の昇圧トランスは、液晶テレビ、液晶モニター、ノート型パソコンなどのインバータ回路に幅広く使用されている。
旧来のインバータ回路用トランスは形状が大きく、発熱も多く、故障が大変に多いものであった。それが小型高効率で安全性の高いものに変わったのは弊社の二次側共振技術によるものである。
しかしながら、弊社製品の採用率は残念ながら少ない。弊社の生産量の100倍以上の特許侵害製品が出回っている状態である。

話をわかりやすくするため、先ず、国内の特許侵害製品から説明する。
正確に言うと、トランスだけでは特許侵害にならない。 トランスとLCD(液晶)パネルを組みあわせ、特別な条件を整える(二次側共振させる)と特許侵害になる。

われわれの特許に使われているトランスの特徴は、二次巻線側の回路に共振を起こさせると、一次巻線と二次巻線とが強烈に結合することである。
この現象を、われわれは調相結合と名付けた。 そしてこの調相結合に伴う力率改善効果という現象を利用することが、われわれの発明であり特許である。
調相結合が起こると不思議な現象が起きる。磁束は本来なら逃げるはずのない、二次巻線の途中から逃げ出し始めるのである。
この磁束の様子を模式化すると次のようになる。

図1 二次巻線上の磁束漏れを起こす特殊トランス
つまり、二次巻線の途中で磁束が漏れて、後ろへ行くほど主磁束が減っているのだ。
したがって、このトランスは二次巻線のうち一次巻線の近傍が密結合(つまり、漏洩磁束成分に比べて主磁束が多い)となり、遠端が疎結合(漏れ磁束が多い)となる。
こんな不思議な磁束の漏れ方をするトランスがあるのか?
ちなみに、従来のトランスにおける漏洩磁束を模式化すると次のような具合になる。
基本的に漏洩磁束というのは二次巻線と一次巻線との間の隙間から漏れるというのが常識なのである。

図2 従来トランスにおける磁束漏れの様子

話を戻すと、なぜ二次巻線上に図1のような磁束漏れが生じるのか。それは二次巻線が分布定数状になっているからである。
二次巻線が分布定数状になっていると、進行波が生じたり波の反射が生じたり定在波が生じたりと、二次巻線上でいろいろな現象が観測される。この現象を我々は分布定数性のインダクタ現象と名づけた。(二次巻線上に発生する進行波や定在波→

この特許の特徴は、トランスの二次巻線に進行波による時間遅延や定在波などが生じることだ。
したがって、特許侵害かどうかを調べるには二次巻線上の時間遅延や定在波が起きているかどうかを確認すれば良い。
二次巻線に進行波や定在波が生じていれば特許侵害の有力な証拠となる。
実際に下記のトランスについて調べてみよう。
以下の画像を見てほしい。 波形の大きさも異なるし、時間遅延(進行波)も発生している。
こういうケースが特許侵害である。
磁束が漏れてない場合はこれら3つの波形はどのような条件下でも同じでなければならない。
それが本来の磁束漏れのないトランスの定義なのである。
時間遅延現象の証拠
実測方法写真
1mA
2mA
3mA
4mA
5mA
6mA
8mA

管電流の増加とともに2mA付近で二次巻線上の時間遅延現象が突如出現し3.3μsecで遅れ時間は飽和する。
これで、写真のOI型コアを使ったトランスが、特殊な漏洩磁束トランスであることはご理解いただけたかと思う。
管電流と位相遅れの実測
下の図をクリックして拡大写真を観て欲しい


管電流と位相遅れ

管電流
(mA)
位相遅れ
(μsec)
0.52 0.18
1.01 0.20
1.43 0.30
2.00 0.42
3.07 1.04
3.96 1.84
5.07 2.41
6.03 2.80
7.03 3.02
8.07 3.14
9.09 3.26
10.00 3.28
結局、I/Oコアのトランスのような類似のトランスを用いてこういった二次巻線上の磁束漏れに伴う現象を起こしながら使うことが特許侵害になるのである。
しかし、I/Oコアのトランスを用いたからといって、全ての条件下で弊社の特許侵害になるというわけではない。
例えば、時間遅延などが生じない2mA以下で使えば特許侵害にならないのかといえば、実はそのとうりなのである。共振型トランスの磁束漏れ実験を見てほしい。
このようは磁束漏れ現象は、トランスの二次側回路を共振させて、さらに適当な負荷が接続された条件(整合条件)でなければ発生しない。
トランス単体で特許の構成要件の全てを充足するわけではないのである。
そうすると、特許請求項の解釈で専門的には微妙な問題が発生する。
こういうのを、「直接侵害にはならない」と言うのだ。
われわれの特許はトランスの特許ではなく、トランスを含めた部品の使い方の特許なのである。
実測の意味について詳細説明へ →
例えばこういうことである。
このようなトランスを使ってインバータを作ると、最終的には特許侵害が発生することは上記の画像を観れば明らかなのだが、FDKはトランス単体だけでは直接侵害にならないことをいいことに無責任な販売をしている。
要するに、特許侵害はこのトランスを使ったお客さんが起こすものだから、自分には関係ないっていう論理だ。
いい根性している(-_-) 言い回しも実に微妙だ。

 「直接侵害する虞(おそれ)はないといえます」?!
これがF社からの返答であった クリックして拡大したものを見て欲しい
FDKからの返答

直接侵害はなくても間接侵害する虞(おそれ)はある。

ついでに回答書も見てほしい。コアだけ作って売るのは自由だって(--)
たしかにコアだけ作って売るのは自由だが、実際にはトランスを作って売っているではないか。回答書→

回答に品がない。
間接侵害という用語は一般的ではない。特許の専門用語である。
普通の感覚でこれを読めばF社の主張として特許は侵害していない、と主張していると思うだろう。実際各社の購買担当は騙されていた。
ここまで来ればさすがに間接侵害という特許侵害が成立するのだが、インバータメーカー各社もけっこうずるい。自分は特許侵害じゃあないっていう具合に他人に責任を押し付けるわけだ。
例えば、われわれから以下のような図(イ号証)を示して特許侵害を追求したのに対し、

イ号証(トランスT1のリケージインダクタンスと冷陰極管
寄生容量Cs1が揃って、初めて弊社特許を構成する)

相手方から返って来た答えは右に示す図のとおりだ。
LCDパネルが被告の主張する図(イ号証)の中に書いてない。
あい変わらず、インバータだけ売っているのだから共振回路は存在しないという論理に終始する。

特許侵害訴訟答弁書→

結局完全な特許侵害はどこで発生するのか?
それは液晶パネルとインバータとが出会うところ、つまりノートPCの組み立てメーカーの工場という解釈になってしまう。

●対立する原告主張と被告主張


磁束の漏れ方に対して、原告主張と被告主張とが最初から対立した。
原告主張が右、被告主張が左だ。

被告主張 A

原告主張 B

以下はある専門家の意見である。

「この事案の場合、裁判所が判断すべき事実認定とは、もし、発明の原理まで参酌するとするならば、被告製品においては、棒状コアと同程度の漏洩磁束があったのかどうかということに尽きます。この点はどうだったのでしょうか。」


それではいったいどちらが本当なのだろうか。それを明確にするために以下の検証を行った。

1.準備

まず、実際の被告製品に、P、a、b、c、の3つの磁束磁束検出コイルを取り付ける。中心コアを流れる磁束を測定するためだ。
2.実測

実際に取り付けたところ。
二次巻線側に実際の液晶バックライト(冷陰極管)をつなげ、一次巻線側から実際にインバータ回路で使われている高周波(約60kHz)で駆動する。
3.結果

磁束検出コイルP、a、b、c、に発生する電圧を測ったものだ。
Pとaの間、aとbの間、bとcとの間のいずれにも波形のずれが観測される。
さて、この図の結果から、実際の磁束漏れが、被告主張A原告主張Bのどちらに近いと思えるあろうか。
4.数値解析結果

さらに詳しく数値解析したみた。
一次巻線から二次巻線に貫入する磁束(青い線)のうち、aの部分で81%も鎖交してしまい、bの部分では逆向きの対向く磁束(緑色)が14%も発生している?!
いやー、予想外というか予想以上の激しい磁束漏れである。
イ号物件は少なくとも漏れ磁束型であることは断言できる。
この数値をもって、磁束漏れしてないと主張するならばその論拠を示してもらいたい。

いずれにしても激しく漏れている。この激しくかつ、変わった漏れ方が、特許明細書でいうところの「極端な漏洩磁束性」であるかどうなの争点なのであるが、次の実験を見てもらおう。
同じトランスでも、二次側を共振させた場合とさせない場合では磁束漏れの様子が異なるのである。共振型トランスの磁束漏れ実験
GREATCHIP JAPAN(旧テクノリウム) 特許リスト
国内特許第2733817号
国内特許第2733817号
特許公開公報
特許広報
US特許
US特許
韓国特許
韓国特許
この他にもヨーロッパ各国やアジアでは香港、中国大陸などの国々で特許を取得済み


●今後の方針
特許戦略第一段では、他励共振型回路と本発明との関係が明確でなかった。
実は、他励共振型のICで駆動されるトランスは全てが本件特許である、二次側の共振手段を利用する。例えばこれらのトランスだ。他励共振型用トランス

これらは皆、極端な漏洩磁束性で上記のような磁束漏れ現象を起こす。
正式ライセンスメーカーのホームページを見てみよう。他励共振型は漏洩磁束型トランスを駆動するとはっきり明記してある。ミネベア鰍フページ
漏洩磁束型トランス(リケージトランス)の形状は同じである。言い逃れはできない。

特許戦略第二段としては回路方式と本発明との関係を明確にすることである。そのために、新たに電流共振型回路という発明をして、業界に普及させることになった。


電流共振型回路明細書
要するに、この回路で動作するものは、全て本件特許を侵害することが、サルでもわかるようにしたものだ。本件新発明以前のトランスも、本回路に載せてみればよい。
弊社が侵害品と称する多くのトランスが、あまりにも簡単に、かつ、見事に動作するので驚くことだろう。
そもそも、磁束が漏れてなければこの回路では動作しない。回路図中のLsが重要な働きをする。動かなかったり、動作周波数が極端に高くなったり(例えば150kHzとかになったり)すれば、本特許を侵害していなかったと判断しても良い。
さらに、この回路は安くて高効率だと来ている。皆、使いたいよね。我々が独占するなんてケチなことは言わないから、ライセンス交渉をしてくれれば許諾する予定である。
全ては世のため人のため、この業界の発展のためである。

●他励共振型回路は時代遅れ?!
我々は多くの書籍を通じて他励共振型回路の普及に努めてきた。他励型、他励式、どちらの言い方もあるが、「式」という言い方は我々の執筆した書籍から広がったことは間違いない。今は、努めて「他励共振型」と呼ぶことにしている。

しかし、一世を風びした感がある他励共振型であるが、ここへ来て急に問題が噴出している。それは、一次側駆動回路の周波数と二次側共振回路の周波数が量産時において激しくバラツいて不一致になっていることである。他励共振型の場合、一次側駆動周波数と二次側回路の共振周波数とが一致しないと変換効率を著しく害する。例えば、サンプル出荷20〜30台までは非常に成績がよく、高効率なのであるが、数千台の量産をかけた途端に数十%の製品に発熱不良が出たりする。理由は明らかである。バックライト寄生容量の大幅なバラツキによる二次側共振周波数のバラツキである。
これまで、他励共振型回路が曲がりなりにも普及することができてきたのは、日本の冷陰極管メーカー、およびバックライトメーカーの管理に基づいて、精度の良いバックライトが供給されてきたことによるところが大きい。液晶黎明期の韓国/台湾も良く管理してくれていた。そのために、何も言わなくてもバックライトの寄生容量は安定していたのであった。

しかし、ここへ来て某國製の精度の悪いものが大量に出回るようになって来た。問題は反射板の精度がめちゃくちゃなこと、高圧配線の処理がいいかげんなことである。安けりゃいいとばかりに、不勉強な新興勢力による「没関係」と「괜찮아요(ケンチャナヨ)」によって寄生容量が不安定になって来ている。 さらに、日本では絶対にやらなかったことであるが、信頼性評価時のサンプル20〜30台は、チャンピオンと呼ばれる良いものだけを抽出して送ってくる。信頼性評価だけ通過してしまえば後は知ったことではないとばかりに急に精度が落ち始めるのである。その結果が、量産時の二次側回路の共振周波数のバラツキにつながり、不良の山となる。
このことに早くから気づいた我々は、二次側回路の共振周波数がどのように変化しても良いように、安くて優秀な回路を提供すべく開発を始めた。それが電流共振型回路である。
あくまでも、このままの惨状が続けばであるが、時代の流れとともに他励共振型回路は崩壊して、全て電流共振型回路に移行せざるを得ないものと確信する。

O2Micro社対MPS社特許裁判の近況について

●2005年7月18日、米国カリフォルニア州地方裁判所においてDiscoveryが終了し、陪審員はMPS社がO2Micro社の企業機密を盗用したと表決(事実認定)した。また、MPS社はO2Micro社に対して1200万$(約14億円)の損害を与えたと表決(事実認定)した。
これからTrial(弁論)が始まる。Trial結審後に判決が出される。
紛争の対象となった企業機密とは以下のもの。[詳細



クリックして拡大したものを
見て欲しい

シャープ株式会社からの返答
FDKのトランスを使用したインバータを使用して、液晶に組み込んで製品化しているシャープに侵害の旨を伝え、返答されたのが右の回答である。
インバータメーカーが(インバータ単体では)「共振回路を構成していない」と答えてきたから自分も特許侵害をしていないって!?
おいおいシャープさん。インバータメーカーは、あなたを直接侵害だって言っているのですよ。

ノートPCの組み立てメーカーともなると台湾のACERとか、QUANTA、ARIMAなど、日本でも知る人ぞ知る大メーカーばかりだ。
日本でも組み立ててはいるが、最近はほとんど台湾メーカーにOEM生産を依頼している。
彼らのような大メーカーが特許侵害を簡単に認めるわけがない。
原因の発生元はインバータメーカーだからそっちの責任だ。はたまたインバータメーカーは、磁束漏れはトランスメーカーの責任だ。そうやって責任逃ればかりしようとしている。
一トランスメーカーであるFDKの責任逃れ(でも法理論的には正しいが)を台湾メーカーがさらに真似をしてコピー品が台湾にあふれる。
各社に特許交渉をしてほとほと呆れかえった。
結局、そのような責任逃れをするならするで勝手にやってなさい!
ともかく、われわれの特許は世界中で成立しているのだ。
みんなで責任の押し付け合いをしているならば、われわれはブランドメーカーに直接侵害を訴えざるをえなくなる。
つまり、台湾各社にOEM生産を委託しているノートPCのブランドメーカーは日本、米国ヨーロッパでノートPCを輸入する際にも特許侵害になるわけだ。

.

直接侵害とは
特許法

第2節  権利侵害

(差止請求権)

第100条

1. 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

2. 特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあっては、侵害の行為により生じた物を含む。
第102条第1項において同じ。) の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
.

間接侵害とは

専用の部品を供給することを言う。

特許法

(侵害とみなす行為)

第101条

次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

1. 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ使用する物を生産し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為
2. 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その発明の実施にのみ使用する物を生産し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為



磁束検出コイルに発生する電圧と磁束漏れとの関係について

図1は磁束検出コイルに発生する電圧と、その磁束検出コイルを通り抜ける磁束との関係を示したものである。
一つのコアに巻かれた磁束検出コイル1,2,3に磁束Φが通り抜けている状態を考える。
それぞれの磁束検出コイルに発生する電圧(e1,e2,e3)はその磁束検出コイルを通り抜ける磁束の時間的変化に比例する。 これらのことは、ファラデー・ノイマンの法則と言って、例えば、大学演習電磁気学P159、その他電磁気関係の本には必ず載っているほど、電磁気学においてはきわめて基礎的なことである。
侵害訴訟等においては専門的経験則に属する知見である。

1.磁束漏れが一切ない場合の各磁束検出コイルの電圧
磁束:図1
図1
図1の説明

ここで、磁束検出コイル1と2の間、及び磁束検出コイル2と3の間に磁束漏れが一切ない場合を想定する。
磁束検出コイル1,2,3を通り抜ける磁束Φは全く同じであるから、磁束Φの時間的変化刄ウ/凾狽燗凾オいことになる。
したがって、磁束検出コイル1,2,3に発生する電圧e1,e2,e3は全く等しくなる。

つまり、
Φ1 Φ2 Φ3 (各Φはベクトル値) ならば、
刄ウ1/凾 刄ウ2/凾 刄ウ3/凾 であり
e1 e2 e3 となる。

2.磁束漏れがある場合の各磁束検出コイルの電圧

ところで、磁束検出コイル1と2の間、及び磁束検出コイル2と3の間に磁束漏れがある場合はどうであろうか。
この場合を想定したものが図2である。
テキスト ボックス:図2
図2
図2の説明

磁束検出コイル1と2の間、及び磁束検出コイル2と3の間から磁束の漏れが生じている場合、図2に示すように、各磁束検出コイルを通り抜ける磁束、Φ1、 Φ2、Φ3は異なってしまう。
実際のトランスにおいては、磁束の時間軸方向への動的な変化が起きているため、図2に記述されるのΦ1,Φ2,Φ3を時間あたりに変化する磁 束の数と読み替えても良い。
(例えばΦ1は一秒に3本増加する、Φ2は一秒に2本増加する…)

この場合、各磁束検出コイルを通り抜ける磁束の時間あたりの変化刄ウ/凾狽ヘ、各磁束検出コイルごとに異なっているわけだから、磁束検出コイル1,2, 3に発生する電圧e1,e2,e3は異なる。つまり、

刄ウ1/凾 刄ウ2/凾 刄ウ3/凾
とすれば、
e1 e2 e3 となる

したがって、各磁束検出コイルに発生する電圧が異なっている場合は、それらの磁束検出コイルを通り抜ける磁束の変化が異なっているわけであるから、磁束検出コイル1と2の間、及び磁束検出コイル2と3の間のどこかで磁束が漏れていることを示す。


3.補足

補足であるが、Φ1,Φ2,Φ3はベクトル値であるから、時間軸方向の変化や磁束の方向も伴っている。
絶対値が |Φ1|=|Φ2|=|Φ3| と等しくても、時間的に位相が遅れて、 Φ1 ≠ Φ2 ≠ Φ3 ということもあるので、その様子を図3に示す。  
この場合も、 e1 ≠ e2 ≠ e3 (eはベクトル) となり、磁束検出コイル1と2の間、及び磁束検出コイル2と3の間から磁束の漏れが生じていることは明らかである。

次にこのような例を示す。
テキスト ボックス:図3
図3
図3の説明

通り抜ける磁束の数はともに3本であるが、時間的にずれているため、お互いに磁力線がつながることができない。
したがって、つながらない磁束はL1とL2との間、及びL2とL3との間のどこかで漏れていなければならない。
いうまでもないことであるが、磁束は大学演習電磁気学の表紙のイメージイラストのようにループを形成し、 必ずつながっていなければならないもので ある。
ならばその磁束はどこを通り抜けているのか?
L1とL2との間、及びL2とL3との間以外にはありえない。
したがって、このような場合も磁束が漏洩していると判断できる。
テキスト ボックス:図44.コイルに生じる電圧の測定

今まで述べてきた1.2.3.をまとめると、具体的には各磁束検出コイルに発生する電圧を測定した場合、磁束漏れがある場合とない場合ではそれぞれ 図4a,bのような波形が観測されるはずである。
(磁束の漏れがない場合が図4a、磁束の漏れがある場合が図4bである。)
したがって、トランスに磁束漏れがあるかどうか評価する場合には、コア及び巻線部に磁束検出コイルを取り付け、各磁束検出コイルの電圧を測って位相、波高値、波形に変化がないかどうかを調べることにより、磁束の漏洩状態が評価できる。

5.実際に実測された磁束漏れの数値評価

テキスト ボックス:図5 図5は実際に磁束検出コイルe2及びe3に生じる電圧を観測し、磁束の漏れを数値的に評価する方法を示したものである。
計算の簡略化のためにe2を基準としてsinθとおき、e3を相対的に表すと、e3は、

0.7sin(θ‐45°)

となることが、実測された波形からわかる。
そこで、磁束検出コイルL2とL3の間から漏洩する時間あたりの磁束の変化量は、L2を通過する磁束の変化量から L3を通過する磁束の変化量を引いたものであるから、以下のように表される。

e2‐e3 = sinθ‐0.7sin(θ‐45°) ……式1

これを解くために、上記の数式を以下の公式にあてはめる。

asin(θ+α)+bsin(θ+β) = √{(acosα+bcosβ)^2+(asinα+bsinβ)^2}sin(θ+γ)

ただし、
(asinα+bsinβ)>0の場合、γ = arctan{(acosα+bcosβ)/(asinα+bsinβ)}
(asinα+bsinβ)<0の場合、γ = arctan{(acosα+bcosβ)/(asinα+bsinβ)}+180°
(asinα+bsinβ)=0の場合で(acosα+bcosβ)>0の場合、γ=90°
(asinα+bsinβ)=0の場合で(acosα+bcosβ)<0の場合、γ=‐90°

これを式1にあてはめると、差分は以下のように計算される。

e2‐e3 = 0.71sin(θ+48.07°)    となる。

この場合、各正弦波の周波数はすべて同じである。
したがって、二つのコイルに生じる磁束の変化量の差が漏れ磁束(の変化量)になるから、その磁束の量はL2を通過する磁束の量の約71%となる。

●結論

図5の実測例において、71%という値は到底無視できるような小さな値ではない。明らかに激しい磁束漏れが生じていることが確認できる。


電磁気学表紙
電磁気学

これは電磁誘導の法則を示したものである
ループ状のコイルに鎖交するループ状の磁束は
電磁気学の基礎でもある
クリックして拡大したものを見て欲しい

電磁誘導の法則
磁束漏れがある場合の各磁束検出コイルの電圧写真


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