報道機関各位
2001年4月9日


液晶点灯装置の特許侵害について

弊社、株式会社テクノリウム(資本金7909万円 東京都文京区湯島 3-37-4 代表取締役 牛嶋昌和)はこのたび富士電機株式会社の関連会社であり、電気機械器具・電子部品等の輸入商社である富士電機イー・アイ・シー株式会社を特許侵害で提訴いたしました。
弊社の特許は液晶パネルの背面照明の点灯装置(つまり、液晶バックライトインバータ)に関するものです。
液晶パネルは自ら発光できないため背面から面光源で照明しますが、この面光源を発光させるためにはインバータという高圧電源装置が必要になります。
弊社技術はこのインバータの小型化に関する技術であり、弊社はこの技術を1992年に開発して以来、多くの国内ノートパソコン及び液晶関連製品に採用されてまいりました。
また、世界各国の特許を取得しております。
現在、弊社技術は液晶アセンブリーの部分の薄型化には欠かせない技術の一つとなっております。

ところが、日本国内のノートパソコンの海外生産移転に伴い、1996年ごろから台湾において弊社技術のコピー製品が出回り始め、台湾製品のノートパソコンにそれらが使われ、現在に至っては相当の数量が世界各国に有名ノートパソコンメーカーのOEMの形で出回っております。

今回訴訟の対象となったインバータは台湾より日本に輸入されるもので、日本国内において液晶メーカーの工場において液晶とセットされて組み立てられるものであり、最終的にはDELL社のノートパソコンに搭載されるものであります。

同様の問題はDELL社に限らず、台湾、韓国及び日本国内生産のノートパソコンのうちで、特に弊社ライセンシーから部品を購入していないほとんど全ての巻線型インバータに関しても起きている問題であり、既にそれぞれのメーカーに対して弊社は特許侵害の警告を行い交渉を続けてまいりました。

今後弊社は液晶製品及び液晶関連製品を扱う各社に対してさらに警告を強め、各社に特許侵害を認識していただくことを望んでおります。

詳しくは弊社ホームページ
http://www.tlm.co.jp/web/、及び、
http://www.tlm.co.jp/web/what/index2.html
をご一読いただきたいと思います。

株式会社テクノリウム
代表取締役 牛嶋昌和




弁論準備手続き前半↓ 弁論準備手続き後半→
原告訴状 構成要件の分説とイ号証 被告準備書面2 実証への反論や判定反論に対する再反論
被告答弁書 イ号証の否定と磁束の模式図及び特許判定結果 原告準備書面4 理論解析や文献による実証の裏付けと被告実証資料への反論
原告準備書面1 イ号証反論に対する反論 原告準備書面5 漏れインダクタンス用語の注意点(参考)
被告答弁書2 イ号証反論に対する再反論 原告準備書面6 イ号証説明に関する再確認
原告準備書面2 磁束の模式図における反論と特許庁判定への実証的反論、被告製品の侵害実証
原告準備書面3 イ号物件の差し替え


原告訴状
訴      状
平成13年4月9日


東京地方裁判所民事部 御中

〒165−0027
東京都中野区野方6丁目30番24号
原告  株式会社テクノリウム
上記代表者代表取締役 牛嶋 昌和

(送達場所)
〒105−0001
東京都港区虎ノ門1丁目4番2号
虎ノ門東洋ビル8階
  п@03(5510)7021
  fax 03(5510)7022

上記原告ら訴訟代理人 弁護士 松 田 政 行
    同          早稲田 祐美子
    同          吉 羽 真一郎

〒103−0027
東京都中央区日本橋1丁目5番3号
被告   富士電機イー・アイ・シー株式会社
上記代表者代表取締役  土 城 弘 一 
 
 特許権に基づく差止等請求事件
   訴訟物の価格 68,250,000円
   貼用印紙額      290,600円

第1 請求の趣旨

    被告は別紙目録記載の放電管用インバーター回路を輸入し、製造し、販売し、販売の申し出をしてはならない。
被告は、その占有する前項記載の放電管用インバーター回路を廃棄せよ。
被告は原告に対し、金7,500,000円及び平成13年4月6日以降支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに仮執行宣言を求める。

第2 請求の原因
1 当事者
  (1)   原告は、コンピューター及び関連機器の開発及び販売、電子部品(液晶)関連技術の開発及び販売等を業とする株式会社である。
(2) 被告は、電気機械器具、通信機、電子計算機、電子部品等を販売、輸入並びに修理保守等を業とする株式会社である。

2 本件特許権
原告の代表取締役である訴外牛嶋昌和は、次の特許権(以下、「本件特許権」という。)を有しており、原告は本件特許権の専用実施権者である(甲第1、第2号証)。
 (1) 特許番号 第2733817号
 (2) 出願年月日 平成5年8月30日
 (3) 登録年月日 平成10年1月9日
 (4) 特許公報発行日 平成10年3月30日
 (5) 異議決定確定登録日  平成11年8月18日
 (6) 専用実施権の設定登録日 平成13年1月6日 

3 本件発明
本件特許権に係る明細書(平成11年7月26日付異議決定確定後のもの。以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲請求項の記載は次のとおりである(以下、この発明を「本件発明」という。)。
 「連続した一本の棒状コアと、一次巻線と、二次巻線とを有し、該一次巻線と二次巻線は該棒状コアのまわりに、該コアに沿って隣接して並置された関係に巻回され、その結果、該二次巻線は該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有する、漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とする放電管用インバーター回路。」

4 本件発明の構成要件
本件発明の構成要件を分説すると、以下のとおりである(以下、分説した構成要件を、「構成要件A」のように表記する。)。
  A   連続した一本の棒状コアと、一次巻線と、二次巻線とを有すること。
該一次巻線と二次巻線は該棒状コアのまわりに、該コアに沿って隣接して並置された関係に巻回されていること。
その結果、該二次巻線は該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有すること。
漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部としたことを特徴とすること。
放電管用インバーター回路であること。

5 従来技術及び本件発明の課題ならびに解決手段、作用効果

(1) 従来技術
本件発明は、放電管用インバーター回路に関するものである。
近年、放電管の点灯用として、点灯回路の小型化のため、また、可搬型機器の普及のため低圧の直流電源から高圧の電源を得るためにインバーター回路が用いられるようになった。そして、可搬型機器の小型化と軽量化のため、放電管用インバーターの小型化が求められており、一般に、インバーター回路の駆動周波数を高くすることによって、昇圧トランスやコンデンサーなどの周辺部品が小型化になりインバーター回路全体の小型化が可能とされているが、周波数を高くしていくと、昇圧トランスの二次巻線や配線などによって生じる寄生容量の影響が無視できなくなる。また、放電管用インバーター回路に用いられる昇圧トランスのコア形状は、磁束の漏洩を効率上有害なものと捉える基本設計から閉塞磁束型、すなわち、EI型あるいはEE型が採用されることが多かった。

(2) 作用効果
上記のように、従来技術では、昇圧トランスの二次巻線や配線などによって生じる寄生容量の影響が無視できず、かつ、昇圧トランスの小型化が難しいため、インバーター回路全体の形状が小さくできなかった。
本件発明は、上記構成要件記載の構成を採用することにより、以下のような作用効果を実現するものである。
  @   昇圧トランスを極端な漏洩磁束型の昇圧トランスとすることにより、該トランスの出力は誘導性となり、また、二次側回路に生じる寄生容量と極端な漏洩磁束型昇圧トランスの誘導性出力とにより共振回路を形成することによって、従来有害とされていた寄生容量を逆に活用して放電管に高い放電電圧を給電する。
A 容量成分と誘導成分が打ち消し合うので力率が改善され、その結果、昇圧トランスの一次巻線に流れる無効電流が少なくなるため、銅損による損失が少なくなりインバーター回路の効率が向上する。
B 従来の閉塞磁束型のトランス構造においては、コアの体積がインバーター回路全体に占める割合が大きく、回路の小型化の障害となっていたことに対し、漏洩磁束型を取ることによって昇圧トランスの小型化を実現する。

6 被告の行為
被告は、業として、平成13年1月20日から、別紙被告製品目録記載の物件(以下、「被告製品」という。)を訴外台湾AMBIT社から輸入し、販売している。
すなわち、被告は被告製品を台湾のAMBIT社から輸入し、訴外株式会社日立製作所茂原工場に販売し、訴外株式会社日立製作所茂原工場において被告製品を液晶ノート型パソコンの液晶パネル版に接合し、この液晶パネル版に接合された被告製品はデルコンピュータ株式会社販売の液晶ノート型パソコンにセットされて販売されているものである。

7 被告製品の構成
被告製品の構成は、別紙物件目録記載のとおりである。

8 本件発明と被告製品との対比
被告製品は、以下に示すとおり、本件発明の構成要件全てを充足し、本件発明の技術的範囲に属する。
(1)   構成要件Aについて
被告製品は、連続した一本の棒状の形態を有する中心コア2と、同中心コア2の回りを囲む巻線ボビン1に沿って巻回された一次巻線4と二次巻線6とを有するから、構成要件Aを充足する。
なお、被告製品は中心コア2に外部ロ字コア3を接合させているが、この外部ロ字コアを接合することによっても昇圧トランスT1の磁束は閉塞磁束性とはならず依然として極端な漏洩磁束性を有したままであるから、本件発明の構成要件Aとの関連では外部ロ字コア3は単なる付加物に過ぎない。
(2) 構成要件Bについて
被告製品においては、一次巻線4と二次巻線6は中心コア2の回りを囲む巻線ボビン1に沿って一次巻線4と二次巻線6とが5のセクションを空けて並置された関係に巻回されている。
なお、一次巻線4と二次巻線6とが直接設していなくても一次巻線4と二次巻線6とは「隣接して並置」された関係であるので、構成要件Bを充足する。
また、仮に、構成要件Bを充足しないとしても、本件特許発明と均等である。
(3) 構成要件Cについて
被告製品においては、二次巻線6は一次巻線4と磁気的に密結合した一次巻線4(PW1)近傍の密結合部分と一次巻線4(PW1)と磁気的に疎結合した一次巻線4(PW1)から離れた疎結合部分とを有するから、構成要件Cを充足する。
(4) 構成要件Dについて
被告製品を液晶パネル(LCD PANEL)に接合し、液晶ノート型パーソナルコンピュータの通常使用の明るさまでこの液晶パネルバックライトに内蔵されている冷陰極管(DT1)を点灯させると、被告製品は漏洩磁束型の昇圧トランス(T1)となり、当該漏洩磁束型昇圧トランス(T1)の疎結合部分より生じる誘導性出力(Le1)と二次側回路に生じる寄生容量(Cw1、CS1)との間で構成する共振回路の一部となる。したがって、本件特許の構成要件Dを充足することになる。
(5) 構成要件Eについて
被告製品は放電管用インバーター回路であり、構成要件Eを充足する。
(6) 作用効果
被告製品の作用効果は、前記本件発明の作用効果(5、(2))と同じである。

8 間接侵害
以上より、被告製品を液晶パネルに接合して通常のノート型パーソナルコンピュータの使用に耐える明るさに当該液晶パネルのバックライトを点灯させた場合、本件発明の構成要件全てを充足する。
なお、被告製品は、液晶ノート型パーソナルコンピュータ専用の放電管用インバーター回路であるから必ず液晶パネルに接続してバックライトを点灯させるものである。

9 原告の請求

(1) 差止請求
前記のとおり、被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属し、かつ、間接侵害となるものであるから、原告は被告に対し、被告製品の輸入、販売、又は販売の申出の差止を求める。
(2) 損害賠償請求
  @   被告は、故意又は過失により前記侵害行為をなしたものであり、原告は専用実施権者として平成13年1月20日から、被告に対し、被告の侵害行為により被った損害の賠償を請求するものである。
そして、原告は、特許法102条3項に基づく実施料相当額を主張する。
A 平成13年1月20日から平成13年4月5日までに被告が輸入し譲渡した被告製品は、合計75000台は下らない。
B 原告は、本件特許発明の輸入実施許諾料として1台につき100円としている。
したがって、平成13年4月5日までの原告の実施料相当の損害額は、75000台×100円=7,500,000円となる。

 なお、本訴提起後も被告の侵害行為が続く場合には、原告は口頭弁論終結時まで、損害額を拡張する予定である。
以上



証 拠 方 法

1 甲1      特許登録原簿謄本
2 甲2      特許公報
3 甲3      被告製品写真


付 属 書 類 
1 訴状副本   1通
2 甲号証写   各1通 
3 資格証明書  2通
4 訴訟委任状  1通
以上


物件目録

1  対象物件(被告製品)
放電管用インバーター回路
(商品名 台湾AMBIT社放電管用インバーター回路J12I003.00、及びJ12I003.01)

2  図面の簡単な説明
第1図 被告製品を液晶パネルに接続しバックライトを点灯した際の回路構成図
第2図 被告製品に含まれる昇圧トランスの構成図

3  被告製品の構成
被告製品は、次の構成を備えた放電管用インバーター回路である。
(1) 放電管用インバーター回路には昇圧トランスT1が含まれている。
(2) 昇圧トランスT1は、連続した一本の棒状コア2を有し、同棒状コア2の回りを囲む巻線ボビン1に沿って一次巻線4と二次巻線6が並置された関係に巻回されている。なお、一次巻線4と二次巻線6とはやや離れた位置に巻回されている。
(3) 二次巻線6と一次巻線4とは磁気的に密結合した該一次巻線4近傍の密結合部分と該一次巻線4と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分を有する。
(4) 昇圧トランスT1は、漏洩磁束型であり、二次側出力は誘導性出力Le1となる。
(5) 昇圧トランスT1は、疎結合部分より生じる誘導性出力Le1と、二次巻線に発生する巻線間寄生容量Cw1と冷陰極管DT1周辺に発生する寄生容量CS1など二次側回路に生じる寄生容量が誘導性の二次側出力と共振回路を構成している。
以上


第1図

  U1は発振器であり、トランスを駆動するパワートランジスタを内蔵している。
C14及びC7はU1内蔵のパワートランジスタのブートストラップ用コンデンサである。
C8a,b,c,dは共振コンデンサであり、U1内蔵のゼロ電流検出回路により出力を反転させるための共振電流を作るためのものである。
D2は管電流の検出をしてU1の管電流調整回路へ帰還させるための直流電圧を生成するダイオードである
T1は漏洩磁束型トランスであり、PW1はその一次巻線であり、SW1はその二次巻線であり、Cw1は二次巻線に発生する巻線間寄生容量である。
Le1は漏洩磁束性のトランスT1の疎結合部分から生じる誘導性出力(リケージインダクタンス)であり、このリケージインダクタンスはCw1とともに分布定数状の遅延回路を形成している。
C11は二次側の共振周波数を調整するための補助コンデンサであり15pFの値を持ち、C10とともに開放出力電圧の検出回路の分圧コンデンサを兼ねていて、C10は0.01μFの値を持ちU1のVrefに接続され、Vrefは交流的にはGNDと等価であり、C4によってもGNDと接続されている。
J2はインバータと液晶パネルを接続するコネクタである。
DT1は液晶パネルのバックライトに内蔵される冷陰極管である。
10 CS1は冷陰極管周辺に発生する寄生容量である。

 第2図

は巻線ボビンであり、中心コア2が挿入されている。
は、連続した一本の棒状の形態を有するフェライト製の中心コアである。
はフェライト製のロの字型の外部コアで、中心コア2に接合されている。
は一次巻線であり、巻線ボビン1上に巻回されている。
は巻線ボビン1上の二次巻線の巻いていないセクションである。
は二次巻線であり、巻線ボビン1上に5のセクションを離れて一次巻線4と隣接して並置された関係に巻回されている。


被告答弁書

平成13年(ワ)第7153号 特許権に基づく差止請求事件
原告 株式会社テクノリウム
被告 富士電機イー・アイ・シー株式会社

答弁書
平成13年5月16日

東京地方裁判所 民事第29部 御中

上記当事者間の標記事件につき、被告は下記のとおり答弁する。

〒100-8355 東京都千代田区丸の内3丁目3番1号 新東京ビル6階
中村合同特許法律事務所(送達場所)
電話 03−3211−8741
Fax 03−3214−6358
被告訴訟代理人
弁護士 中村  稔
熊倉 禎男
辻居 幸一
渡辺  光
同補佐人
弁理士 合田 潔


第1 請求の趣旨に対する答弁
原告の請求をいずれも棄却する、
訴訟費用は原告の負担とする、
との判決を求める。

第2 請求の原因に対する認否
請求の原因1項の記載は認める。
同2項の記載は(6)を除き認める。(6)の専用実施件の設定登録日は平成13年1月9日である。
同3項の記載は認める。
同4項の記載は認める。
同5項の記載は、本件特許公報(甲第2号証)に記載がある限度で、かかる記載があることは認める。
同6項記載のうち、被告が訴外台湾AMBIT社から放電管用インバータ回路を購入し、訴外株式会社日立製作所に販売していることは認めその余は否認ないし不知。
同7項ないし10項は否認ないし争う。

第3 被告製品及び物件目録について
1  被告製品は、本件特許発明にいう「連続した一本の棒状コア」、「該二次巻線は該第一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分とを有する」、「漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部とした」構成は、いずれも具備していない。
 また、物件目録添付の第1図は、誤りであり、被告製品の回路図は、正しくは、答弁書添付のとおりである。
2  被告製品におけるコアは、EE、EI型と同様な閉塞磁束型であり、磁束の形成を模式的に示すと以下のとおりである。
 被告製品においては、「磁束は閉塞磁束性とはならず、依然として極端な漏洩磁束性を有したまま」ではないし、また、「外部ロ字コアは単なる付加物」でもない(訴状7項11ないし15行)。
3  本件特許発明においては、二次巻線が「該一次巻線と磁気的に密結合した該一次巻線近傍の密結合部分」と「該一次巻線と磁気的に疎結合した該一次巻線から離れた疎結合部分」とを有することを構成要件としているが、被告製品の二次巻線のどの部分をそれぞれ「密結合部分」ないし「疎結合部分」と主張するのか具体的に明らかにされたい。
本件特許発明に「共振回路」とは、「直列共振回路」(甲第2号証5欄15行、同19行、同35行、同37行、同47行、6欄38行)であり、この回路により「放電管に高い放電電圧を供給する」こと、並びに「電流波形が正弦波に近くな」ることが必要とされると解されるが(甲第2号証4欄41ないし44行、5欄12ないし21行、同30ないし36行、同43ないし47行、6欄13ないし17行、同34ないし40行)、物件目録によれば、被告製品の回路は、「分布定数状の遅延回路」であると記載されているだけである(物件目録第1図の説明がき6項)。
 本件特許公報においては、「分布定数状の遅延回路」(この趣旨も不明確である)という記載はなく、これが本件特許発明の「共振回路」であると主張する根拠を本件特許公報に基づき説明されたい。
被告製品において、「昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力」と、「二次側回路に生じる寄生容量」が活用され(甲第2号証4欄41ないし44行)、「共振回路の一部」となっていると原告が主張する具体的根拠を明らかにされたい。
本件特許については、訴外スミダ電機株式会社から判定請求がなされ、同社の製品販売に係る放電管用インバータ回路は、本件特許発明の技術的範囲に属しないと判断されている。
 判定における本件特許発明の解釈、特に「漏洩磁束型」の解釈につき非常に参考になると思われるので、乙第1号証として提出する。

以上

証拠方法

乙第1号証 平成11年判定第60074号判定


原告準備書面1

平成13年(ワ)第7153号 特許権に基づく差止等請求事件 
原告 株式会社テクノリウム
被告 富士電機イー・アイ・シー株式会社


原告準備書面1
平成13年6月27日


東京地方裁判所民事第29部 御中

原告訴訟代理人 弁護士 松 田 政 行
    同       早稲田 祐美子
    同       吉 羽 真一郎

第1 訴状の訂正
訴状の以下の部分を以下のとおり訂正する。
(訂正前)
この液晶パネル版に接合された被告製品はデルコンピュータ株式会社販売の液晶ノート型パソコンにセットされて販売されているものである。(訴状6頁目下から2行目ないし7頁目第1行)
(訂正後)
この液晶パネル版に接合された被告製品は、米国Dell Computer Corporation(以下、米国Dell社という)が販売している「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」にセットされて販売されているものである。
被告製品は台湾から輸入された後、株式会社日立製作所茂原工場に納入され、同工場において米国Dell社が製造販売している液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」用に設計された液晶パネル板に接合される。放電管用インバータ回路である被告製品及びこれに接合された液晶パネル板は、米国Dell社の液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」向けに設計されているものである。 
訂正の理由
デルコンピュータ株式会社は、米国Dell社の100%子会社である日本法人であるが、株式会社日立製作所茂原工場が液晶パネルに接合された被告製品を納入しているのは、デルコンピュータ株式会社ではなく、米国Dell社であるため、本準備書面1のとおり訂正する。

第2 答弁書における被告製品及び物件目録についての反論
連続した一本の棒状コアについて
(1) 被告製品は、訴状添付第2図の形状を有しており、形状から見て明らかに「連続した一本の棒状コア」を有している。
すなわち、被告製品は、中心コア、外部ロの字コア、ボビン、一次巻線、二次巻線から形成されており、かつ、この中心コアは棒状に長い一本のコアであり、かつ、この中心コアは、途中での接合や隙間がない。
(2) 被告は答弁書において、「連続した一本の棒状コア」について否認しているが(答弁書2頁目下から5行目)、その理由について明らかにされたい。
物件目録添付第1図について
(1) 訴状添付第1図は、等価回路図であるため、答弁書添付回路図とは異なる。
(2) 被告製品は、液晶ノート型パソコンの液晶パネルと接合し、同液晶パネルのバックライトをノートパソコンの通常使用に適する明るさに照らした場合に本件特許を侵害するものであり、訴状主張のとおり間接侵害を形成する。
したがって、訴状添付第1図の等価回路図を、本準備書面1添付第1図のとおり変更する。本準備書面添付第1図は、被告製品が間接侵害である点を踏まえ、被告製品を点線の範囲で示している。
(3) なお、答弁書添付図は、一次巻線に中点タップと思われる線が2本記載されているが、この中点タップは被告製品には現実に存在していない。
被告製品が閉塞磁束型であるという主張について
(1) 被告は、被告製品におけるコアはEE、EI型と同様な閉塞磁束型であるとし、その形成を模式的に示している。
上記模式は、中心コアの長さが実際の被告製品よりもはるかに短く、実態を示していない。
後に、原告にて立証するように、コアの長さが長くなれば本件特許のように「極端な漏洩磁束」となるのであって、答弁書における被告製品の模式は正しい表示をしていない。
(2) 答弁書記載の被告製品の模式がコアの長さが異なる点は、(1)において指摘したとおりであるが、更に、答弁書記載の模式では、磁束が全く漏れていない。すなわち、答弁書記載の模式によれば、被告製品の磁束は巻線に対して直角に、かつ、コアの長手方向に平行に通りぬけていることになる。
被告は、被告製品の磁束が上記のとおりであるのか、すなわち、被告製品では磁束は全く漏れていないという主張なのかどうか明らかにされたい。
「密結合部分」と「疎結合部分」について
(1) 被告製品の二次巻線における密結合部分は、中心コアに沿った一次巻線の近傍にある二次巻線であり、疎結合部分は中心コアに沿って一次巻線から離れた部分にある二次巻線である。
(2) なお、上記は原告における立証事項であるから、具体的には、立証の過程で明らかにする次第である。
「分布定数状の遅延回路」について
(1) 本件特許発明における「共振回路」が「直列共振回路」であることは認める。
(2) 訴状第1図における「分布定数状の遅延回路」について説明する。
「分布定数状の遅延回路」とは、以下のとおりである。
進行波、反射波、定在波、などの分布定数状である場合に生じる現象が観測される。
二次巻線上の磁束漏れ効果によって、このような分布定数状の遅延回路が生じるのである。
乙第1号証について
(1) 訴外スミダから本件特許に関し判定請求が出されたこと、及び、その内容については乙第1号証のとおりである。
(2) しかしながら、乙第1号証の判定は、被告製品とは異なる条件で出されたものであり、かつ、実際に磁束漏れの測定などを一切行わずに行われた判定であるから本件訴訟においては参考にならない。
また、トランスの磁束漏れの性状は、接続される負荷の状態によっても変化するのである。
(3) 乙第1号証における本件特許の「漏洩磁束」の解釈、及び、トランスの磁束漏れ性状について、次回に実測結果を含めて主張立証する。

以上


第1図
                
被告製品は左の点線部分である。左の点線部分以外は、液晶パネル板の部分である。


平成13年(ワ)第7153号  特許権に基づく差止請求事件   直送済

原告  株式会社テクノリウム
被告  富士電機イー・アイ・シー株式会社

証 拠 説 明 書

平成13年6月27日
                                                     東京地方裁判所民事第29部 御中

原告訴訟代理人 弁護士  松 田  政 行

  同          早稲田  祐美子

  同          吉 羽  真一郎






号 証

標目

作 成
年月日

作成者

立 証 趣 旨

備考

甲1

特許登録原簿謄本

H13.3.29

特許庁

本件特許発明の手続・権利関係。

甲2

特許公報

H10.3.30

特許庁

本件特許発明の内容。

甲3

被告製品写真

H13.4.1

原告代表者

被告製品の形状。

甲4

「LCDバックライト用インバータの最新動向と調相結合トランス型インバータ」と題する論文

H11.11.1

原告代表者

本件特許発明の内容、及び対象トランスについて。

甲5

「液晶バックライトの寄生容量対策と、共振型インバータによる高効率インバータの設計方法」と題する論文

H12.10.27

原告代表者

本件特許発明の内容。


被告答弁書2

平成13年(ワ)第7153号特許権に基づく差止請求事件

原告 株式会社 テクノリウム
被告 富士電機イー・アイ・シー株式会社

準備書面

平成13年8月10日


東京地方裁判所 民事第29部 御中

 上記当事者間の標記特許権に基づく差止請求事件について、被告は、次のとおり弁論を準備する。

被告訴訟代理人
弁護士 中村 稔
同 熊蔵 禎男
同 辻居 幸一
同 渡辺 光
同補佐人
弁理士 合田 潔


第1 図面の差し替え
 被告製品に関する答弁書添付図面を本準備書面添付のとおり差し替える。
 この図面は、原告準備書面1の第2の2(3)において指摘のあった2本の中点タップを削除したものである。

第2 訴状の訂正に対する認否
 被告準備書面(1)の第1の1に記載された訂正後の主張についての認否は、答弁書第2の6記載のとおりである。

第3 再度の求釈明
 被告は、迅速な処理のために、答弁書第3の4及び5に記載された釈明事項について、原告が釈明することを再度求める(この点は、そもそも、要件事実として訴状に記載されるべき事項である。)。いずれにしても、被告製品には直列共振回路は存在しない。なお、直列共振回路を説明する文献として乙第2号を提出する。
 なお、答弁書第2の3に記載された釈明事項については、原告準備書面1の第2の4(2)の主張に従い原告の立証を待つことにするが、「中心コアに沿った一次巻線の近傍」(「密結合部分」)、」中心コアに沿って一次巻線から離れた部分」(「疎結合部分」)という記載では、被告製品の二次巻線におけるどの部分を具体的に指すものか不明である。いずれにしても、被告製品の二次巻線においては、このような区別はない。
以上


証拠方法

乙第2号証の1 (株)新星出版社の発行にかかる「イラストで電気のことがわかる本」表紙
同2 172ないし175項
同3 奥付
以上


原告準備書面2

平成13年(ワ)第7153号 特許権に基づく差止等請求事件 
原告 株式会社テクノリウム
被告 富士電機イー・アイ・シー株式会社


原告準備書面2

平成13年8月23日

東京地方裁判所民事第29部 御中

原告訴訟代理人 弁護士 松 田 政 行
    同       早稲田 祐美子
    同       吉 羽 真一郎

第1 訴状添付第1図の訂正
 前回期日における裁判所の指摘により、訴状添付第1図を本準備書面第1図に差し替える。

第2 本件特許の漏洩磁束について
 本件特許の構成要件中、構成要件A、及びBについては、訴状及び原告準備書面1にて主張したとおりである。そこで、本準備書面では、構成要件C及び構成要件Dを中心として主張立証を行う。
 まず、本件特許の漏洩磁束について主張立証する。
用語の定義(図2)
まず、本件特許の漏洩磁束を解釈するにあたって、用語の定義を確認する。この用語の定義は、電気磁気の学術分野においては当然のものであるが、ここに確認するものである(甲8、9,10、11証)。
(1) 鎖交する磁束(鎖交磁束)
@ 一次側鎖交磁束
一次巻線と鎖交(inter link)する磁束のこと。
A 二次側鎖交磁束
二次巻線と鎖交する磁束のこと。
B 主磁束
一次巻線と二次巻線の双方と鎖交する磁束のこと。

図2
(2) 漏れる磁束(漏洩磁束)
@ 一次側漏洩磁束
一次巻線と鎖交するが二次巻線とは鎖交しない磁束のこと。
A 二次側漏洩磁束
二次巻線と鎖交するが一次巻線とは鎖交しない磁束のこと。


漏洩磁束の概念
(1) 完全な閉塞磁束型トランスの場合
理想的な閉塞磁束型トランスは、図3のように磁束の全てがコアで形成される磁路を通り全く磁束の漏洩がないものである。
被告答弁書で被告が主張する模式図も、上記のとおりであり、全く磁束の漏洩がないことになる。

図3
(2) 通常の閉塞磁束型トランス
@ ところが、通常の閉塞磁束型トランスであっても、一次巻線と二次巻線との間から磁束が漏洩する(甲8,9,10,11号証)(図4)。
これは、電気回路と異なり、磁気回路では透磁率の開きが普通10の4乗程度しかないため、磁束が磁気回路から漏れやすいためである。磁束の漏洩自体は公知である。
A なお、通常の閉塞磁束型トランスにおける磁束の漏洩は公知であるものの、下記(3)の形状のトランス(漏れ変圧器等)を除けば一般にこの磁束の漏洩は有害なものとして、積極的な利用はされていなかった。
また、漏洩する磁束もコアを通る磁束に比べて割合的に僅かなものであった。
(3) 従来の漏洩磁束の利用
@ 乙第1号証の判定請求にも引用されているように、従来でも、漏洩磁束性トランスから生じるリーケージインダクタを利用したトランスはあった(特昭63-5996号 甲14号証、特開平5-91740号 甲15号証、および甲11号証(漏れ変圧器))。
図5
A しかし、この漏洩磁束を積極的に利用したトランスは、図5ないし図6のように、一次巻線と二次巻線との間に積極的なギャップなどの磁束漏れ機構を設け、ここから磁束を漏れさせているものである。
B 図5は、EE型コアであり、一次巻線と二次巻線のコアの間にギャップを設け、そこから磁束が漏れるようにしている。
乙第1号証の判定請求において引用されている従来の漏洩磁束性トランスのリーケージインダクタを積極的に利用した技術(特昭63-5996号 甲14号証)は、図5のように、EE型コアにギャップを用いて漏洩磁束を生じさせているものである。
C これに対し、図6は、EE型あるいはEI型コアの一次巻線と二次巻線との間にコアと同じ磁性体を差し込み、差し込んだ磁性体から磁束が漏れるようにしている。これは、比較的大きいトランスで、電子レンジなどによく用いられている(甲11号証)。
図6
D このように、従来型の漏洩磁束を利用したトランスは、一次巻線と二次巻線との間に磁束が漏れるような機構を設けていた(甲11号証)。
そして、この磁束漏れ機構から磁束が漏れるため、当然ながら、一次巻線と二次巻線との間の磁束漏れ機構部において、ほとんどの漏洩磁束が生じていたのである。
(4) 本件特許の漏洩磁束
これに対し、本件特許の漏洩磁束は図7のとおりである。
@

図7
(図7では、磁束1は直線、磁束2は波線で表す)
すなわち、本件特許の漏洩磁束とは、本件特許構成要件Cより明らかなように、二次巻線は一次巻線近傍の密結合部分を有するのであるから(甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)、上記図5ないし図6のように、一次巻線と二次巻線との間から大量に磁束が漏洩するものではない。
これを磁束の模式図で表すと、図7のとおり、磁束1は一次巻線を通り主磁束の大部分が一次巻線近傍の二次巻線部に貫入するため、この部分が密結合部となる (甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)。なお、本件特許においても、通常の磁束の性質と同様、一部、一次巻線と二次巻線の間で磁束の漏洩はあるが、全体としてその割合は多くはない。
A 次に、二次巻線は、一次巻線から離れた部分が磁気的に疎結合した疎結合部分を有するのであるから(甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)、二次巻線の途中では磁束が中心コアで形成される磁路から外れて漏洩する。すなわち、一次巻線の磁束1のうち二次巻線へ進んだものは、二次巻線の途中から徐々に漏れ始める。
B すなわち、上記@、Aのように、二次巻線の途中から磁束1が漏洩するため、主磁束の多くが貫入する二次巻線の一次巻線近傍は密結合である。また、二次巻線の一次巻線から離れた部分は磁束の漏洩があるため疎結合である(甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)。
更に、この二次巻線上の漏洩によって、二次巻線近傍の密結合部分は主磁束の貫入があるために漏洩磁束性の昇圧トランスとしての効果を有し、同時に一次巻線から遠端の二次巻線は二次巻線のみと鎖交する漏洩磁束成分だけで構成されているためチョークコイルと等価な効果を有するのである(甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)。
C このような二次巻線上における磁束の漏れに伴う諸現象を遊離インダクタ効果といい、その結果、一次巻線近傍の密結合は結合が強いため漏洩磁束型の昇圧トランスとしての働きをし、遠端は疎結合となるため、チョークコイルと等価になるのである。
D なお、外部コアがある場合、二次巻線の途中から漏れた磁束は、空気中を透過した後外部コアに吸収されて一次巻線に戻るもの(実線で示されたもの)と、空気中を透過した後外部コアに吸収されて二次巻線に戻るもの(破線で示されたもの)の二通りがある。
一度漏れた磁束が外部コアに再び吸収されても、それは、閉塞磁束とは言えないし、二次巻線上における磁束の漏れに伴う諸現象も変わらず、二次巻線近傍の密結合部分は、漏洩磁束トランスとしての効果を有し、同じに一次巻線から遠端の二次巻線はチョークコイルとしての効果を有するという本件特許の性質は変わらない。
(5) 以上のように、本件特許は、連続した一本の棒状コアを有し(構成要件A)、かつ、一次巻線近傍の二次巻線は密結合、遠端は疎結合であり(構成要件C)、二次巻線近傍の密結合部分は、漏洩磁束トランスとしての効果を有し、同時に一次巻線から遠端の二次巻線はチョークコイルとしての効果を有することが、従来の放電管用インバータ回路と大きく異なる特徴である(甲2号証1欄請求項1、甲2号証4欄下から4行目ないし5欄7行)。
これらは、原告代表者が見出した遊離インダクタ効果によるものであるから、従来の漏洩磁束を積極的に利用したトランス(図5、図6)、あるいは漏洩磁束を利用しないトランスとは、根本的に異なるものである。

第3 構成要件Dについて
本件特許構成要件Dとしては、「構成要件AからCまでの特質を有する、漏洩磁束型の昇圧トランスの疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部としたこと。」(甲2号証1欄請求項1)が必要である。
(1) このうち、構成要件AからCまでの特質を有する、漏洩磁束型の昇圧トランスについては、既に、第2において述べたとおりであるから、「疎結合部分より生じる誘導性出力と二次側回路に生じる寄生容量との間で構成する共振回路の一部としたこと」について述べる。
(2) 疎結合部分より生じる誘導性出力は、本来、強い電流制限作用を有するために放電管に十分な放電電流を供給することができないはずである。そこで、チョークコイルの誘導成分を二次側回路により生じる寄生容量またはこれと並列に接続された補助容量によって打ち消してやることにより直列共振回路を構成すると、放電管に高い放電電圧を給電する(甲2号証5欄12行ないし16行)。
ここでいう「打ち消す」とは誘導成分とリアクタンスの絶対値が等しく、かつ、逆の性質(つまりは電圧と電流の位相特性)を持つリアクタンス、つまり容量成分を直列または並列に接続することであり、前者を直列共振、後者を並列共振と呼んでいる。本特許で言うところの二次側回路の共振とは直列共振を指す(甲9号証)。
 このように、共振回路を構成することにより、放電管に高い放電電圧を給電することになり、液晶ノートパソコンで使用可能な電圧の給電が可能になるのである。
(3) これを、液晶ノートパソコンの場合でいえば、この共振に必要な寄生容量は、主に、LCD Panelに組み込まれた冷陰極管が点灯した状態で、冷陰極管周辺から供給されるものと、場合によっては負荷と並列に接続された補助容量とで構成されるものである(甲2号証4欄12行ないし16行、5欄30行ないし49行、6欄43行ないし47行、甲4号証、甲5号証)。
(4) なお、上記のような二次側回路の共振を生じた場合二次巻線上に分布定数性の遅延現象が発現する(図8)。
分布定数回路が構成されている場合、信号が波のように伝搬していく現象を生じる。このように、信号が波のように遅延していく回路のことを分布定数状の遅延回路という(甲12号証、甲13号証)。
この遅延現象によって二次巻線上の磁束漏れが生じ、その結果二次巻線上に密結合部と疎結合部とが生じる。
そのため、本特許の構成要件である二次巻線のうち一次巻線近傍の密結合部と一次巻線から離れた部分の疎結合部の存在は、もう一つの構成要件である二次側回路の共振とは不可分であり、それぞれの構成要件が独立して存在できるものではない。
(5) ところで、このような分布定数状の遅延回路が構成されている場合、その伝送路である二次巻線上には、正弦波の絶対値が等しく、かつ、時間遅延を伴った波の伝播、つまりは進行波が観測されなければならないのであるが、理想的な進行波が観測されるのは伝送路と負荷のインピーダンスとが整合または整合に近い条件の場合に限られる(甲12号証、甲13号証)。
冷陰極管用インバータ回路においては、多くの場合、冷陰極管のインピーダンスとこのような伝送路との完全な整合を得るのは難しく、この場合、不整合による反射により反射波が生じて定在波が観測されることになる(甲17号証)。

第4 スミダ判定請求について
スミダ判定請求について
(1) スミダ判定請求は、
@ 本件特許の漏洩磁束を開磁路かつ極端な漏洩磁束と解釈し、
A 実測せずに、形状のみでイ号物件についてわずかしか磁束が漏洩していない旨の結論を出した。
(2) 上記判定請求中、@本件特許の漏洩磁束を開磁路と判断したことは誤りである。
(3) 更に、スミダ判定請求では、放電管が寄生容量を伴わない裸管の状態のイ号物件によって判定を行っており、放電管に寄生容量を伴い共振している本件訴訟とは結論を異にする。(甲16号証)。
判定請求の過程
(1) 判定請求は以下のように本件特許を解釈している。
@ 従前から閉磁路であってもその具体的磁路(コア)構造によっては、漏洩磁束が生じることは技術的に自明。
A 閉磁路構造における「漏洩磁束」を積極的に利用する、すなわち、「リーケージインダクタ」を利用する昇圧トランスは「漏洩磁束型」の昇圧トランスとして本件特許発明に係る出願当時、公知ないし周知(特昭63―5996号において、リーケージインダクタを利用して放電灯を点灯駆動するインバータ回路が開示され、インバータトランスと共振についても記載がある。)
B 「漏洩磁束型」の昇圧トランスは、放電管用インバータ回路に用いられていた。
C 本件特許発明の「漏洩磁束型」は、公知ないし周知のものとは異なり、「極端な漏洩磁束」を生じるものであることが必要であり、このことにより本件特許明細書に記載された作用効果を達成することができる。
D この結果、一本の棒状コアに一次巻線と二次巻線を隣接並置して巻回し、一次巻線から離れた疎結合部分を有する二次巻線を形成することにより、「誘導性出力」を生じるものであるとし、これを「遊離インダクタ」と称する新規な概念であるとして、この「遊離インダクタ効果」(具体的には「極端な漏洩磁束効果」)を持たせるものであるから、これを利用して構成した本件特許発明は、従来の「漏洩磁束型トランスのリーケージインダクタと寄生容量との共振」とは異なる技術的作用と効果を有する、とする当該主張に沿う。
E したがって、本件特許発明の構成要件Cにおいて規定された「漏洩磁束型」とは開磁路でありかつ「極端な漏洩磁束」を生じることを必須の構成とするのが相当。
F なお、特許異議申立時に、請求項2は昇圧トランスを「閉塞磁束型」としかつ寄生容量との「共振回路」を構成するものであるが、この点に係る構成は刊行物(特公昭63−5996号)に開示されているように従来より公知の技術的事項である旨審判合議体の判断がなされ、原告代表者(被請求人、特許権者)は格別反論することなく、請求項2を削除している。
(2) 上記@からCまではそのとおりである。
なお、Dは、遊離インダクタ効果を極端な漏洩磁束と同じと解したのであれば、その点は誤りである。遊離インダクタ効果は、構成要件AからDまでのトランスにおいて見られる効果であって、本件特許における極端な漏洩磁束性とイコールではない。
極端な漏洩磁束性は遊離インダクタ効果を生じさせるための条件の一つであるが遊離インダクタ効果そのものではない。
また、Eで、「開磁路」かつ「極端な漏洩磁束」としたのは誤りである。
 なぜなら、開磁路であれば、当然磁束は極端に漏洩しているのであるから、本判定請求のイ号物件が閉磁路のうちの単なる「漏洩磁束型」か「極端な漏洩磁束型」かについて議論する必要がないからである。
 むしろ、本判定請求は、閉磁路であることを前提に、それが、従前の漏洩磁束性か、あるいは、本件特許の「極端な漏洩磁束」なのかを議論しているものであるから、明らかに上記判定請求が本件特許の漏洩磁束性を「開磁路」かつ「極端な漏洩磁束」と結論づけたのは誤りである。
 更に、Fについては、原告代表者(特許権者)は、接続する誘導性バラストとの関係で削除したものであり、Fの解釈も誤りである。
請求項2に記載される「閉磁路トランス」とは明らかに理想的な閉磁路トランス(磁束漏れの全くない、あるいはほとんどない)である。たとえ、この請求項の削除が「誘導性バラスト」の削除だけではなく「閉磁路トランス」を含むものと仮定しても、原告代表者(特許権者)が削除したのは「理想的か理想的に近い閉磁路トランス」を削除したのであって、判定の中で検討されているような、「ある程度の漏洩磁束性を伴った閉磁路トランス」を削除したのではない。
なぜならば、請求項2の本旨は、閉磁路トランスに外付けした誘導性バラストと二次側の寄生容量とを共振させることである。
請求項2に述べるところの「閉磁路トランス」が、仮に判定の中で述べるような、「ある程度の漏洩磁束性を持った閉磁路トランス」であるとすると、そのようなトランスの等価回路には既に二次巻線に直列に接続されるリケージインダクタンスLeが含まれているわけであるからその直列成分のLeだけで、誘導性バラストと等価な効果が得られるわけであり、ここにさらに直列に「誘導性バラスト」を設ける意味がないからである。
したがって、この請求項に記載された「閉磁路トランスは」理想的かそれに近い閉磁路トランスであって、そのような閉磁路トランスと直列に接続された誘導性バラストを削除したものである。
これに対し、判定の述べられるところの閉磁路トランスは明らかに「ある程度の漏洩磁束性を伴った閉磁路トランス」であるから判定の中で意識除外として引用したのは誤りである。
また、文言解釈上からも、削除された請求項は閉磁路トランスと誘導性バラストとの組み合わせを含むものについてであり、閉磁路トランスのみを意識除外したものではなく、一方、判定の中ではこのような「閉磁路トランスと誘導性バラスト」の構成については何ら検討していないのであるから、やはり当該部分を引用した判定は誤りである。
判定請求のイ号物件について(甲16号証)
(1) 判定請求におけるイ号物件では、負荷は放電管と記載されているが、単なる裸放電管(冷陰極管)とLCD Panel(液晶バックライトに組み込まれた冷陰極管)とでは特性が大きく異なる。
(2) すなわち、判定請求は、イ号物件の負荷を単に放電管と記してあるのみであり、実測することもなく、形状から従来型の閉塞磁束であり、漏洩する磁束もわずかのものと断定している。
(3) これについて、原告において実証したのが甲16号証である。
 すなわち、判定請求のイ号物件のように、単なる裸の放電管と、本件訴訟及び、現実に液晶ディスプレイで使用されている状態とを実測したものである。
 この結果、明らかに、単なる裸の放電管の場合と、現実に液晶ディスプレイで使用されている場合とは、磁束の漏洩が異なることが判明している。
(4) したがって、スミダ判定請求は裸の放電管の判断に限定されるものであり、本件訴訟においては、負荷はLCD Panel(液晶バックライトに組み込まれた冷陰極管)であるから、何ら参考にはならない。

第4 被告製品について
被告製品の流通ルートについて
被告製品は台湾から輸入された後、株式会社日立製作所茂原工場に納入され、同工場において米国Dell社が製造販売している液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」用に設計された液晶パネル板に接合される(甲6、7号証)。
米国Dell社のOEM調達
(1) ところで、米国Dell社は、液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」の液晶パネル板を、台湾AMBIT社→被告→株式会社日立製作所茂原工場ルート(甲6、7号証)以外に、台湾AMBIT社→韓国・三星(サムソン)、台湾AMBIT社→日本IBMの3つのルートで、OEM調達をしている。
それぞれの液晶パネル板用にトランスが設計されているため、台湾AMBIT社がこれらOEM用に提供するトランスの大きさはわずかに異なり、トランスに付される製品名が異なるものの、すべてOEM製品として同じ液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」の14.1インチ液晶パネル板あり、また、それらに用いられているインバータ回路の構成も同じである。したがって、当然ながらその設計も全く同じである。
さらに、上記インバータ回路は、米国Monolithic Power Systems, Inc.製ICである、MP1010を用いているが、このMP1010は二次側の共振を前提とした設計思想のICであり、二次側回路の共振周波数を自動的に検出する機構を持つ。このことは、MP1010の販売促進のための資料の中に明記されている(甲18号証)。したがって、このICを使って設計されたインバータ回路は、必然的に本特許請求項の構成要件の一部である二次側回路の共振を含むものとなる。
原告は、被告製品を入手しようと試みたが、原告が入手できた液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」は、いずれも、三星、あるいは日本IBMの14.1インチ液晶パネルを使用しており、被告製品→日立製作所のものは入手できなかった。
(2) そこで、今回、原告は、上記製品のうち、日本IBMの液晶パネルにおいて、実証実験を行った(甲17号証)。

図9
 その結果、二次側回路の共振周波数がインバータの動作周波数と一致し、二次巻線上から大きな磁束漏れが、観測された(甲17号証)。
このうち、磁束の漏洩については、図9の模式図のとおりである。
(3) 更に、共振については、甲17号証の結果と併せ、前述したとおり、米国Dell社の液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」のインバータ回路に用いられているICであるMP1010は二次側の共振を前提とした設計思想のICであり、二次側回路の共振周波数を自動的に検出する機構を持つ(甲18号証)。
したがって、必然的に本特許請求項の構成要件の一部である二次側回路の共振を含むものとなる。
(4) 以上のとおり、米国Dell社の、液晶ノート型パソコン・製品名「Latitude C600」及び「Inspiron 4000」の液晶パネル板に使用されている放電管用インバータ回路は、構成要件C及び構成要件Dを具備しており、本件特許請求に含まれることは明らかである。
したがって、被告製品も、本件特許請求に含まれるものである。
以上


原告準備書面3

平成13年(ワ)第7153号 特許権に基づく差止等請求事件 
原告 株式会社テクノリウム
被告 富士電機イー・アイ・シー株式会社

原告準備書面3

平成13年8月31日


東京地方裁判所民事第29部 御中
              
原告訴訟代理人 弁護士 松 田 政 行
    同       早稲田 祐美子
    同       吉 羽 真一郎

第1 訴状添付第1図の訂正
 8月29日弁論準備期日における被告の釈明に応え、訴状添付第1図を本準備書面添付第1図に差し替える。
以上



第1図

重要な部分

1. U1は発振器であり、トランスを駆動するパワートランジスタを内蔵している。
2. C1及びC10はU1内蔵のパワートランジスタのブートストラップ用コンデンサである。
3. C25,C26,C16,C9は共振コンデンサであり、U1内蔵のゼロ電流検出回路により出力を反転させるための共振電流を作るためのものである。
3. D2は管電流の検出をしてU1の管電流調整回路へ帰還させるための直流電圧を生成するダイオードである。
4. T1は漏洩磁束型トランスであり、PW1はその一次巻線であり、SW1はその二次巻線であり、Cw1は二次巻線に発生する巻線間寄生容量である。
5. Le1は漏洩磁束性のトランスT1の疎結合部分から生じる誘導性出力(リケージインダクタンス)であり、このリケージインダクタンスはCw1とともに分布定数状の遅延回路を形成している。
7. C12は二次側の共振周波数を調整するための補助コンデンサであり15pFの値を持ち、C15とともに開放出力電圧の検出回路の分圧コンデンサを兼ねていて、C15は0.01μFの値を持ちU1のVref(比較用電圧)に接続され、Vref(比較用電圧)は交流的にはGND(アース)と等価であり、C2によってもGND(アース)と接続されている。
8. CN2はインバータと液晶パネルを接続するコネクタである。
9. DT1は液晶パネルのバックライトに内蔵される冷陰極管である。
10. Cs1は冷陰極管周辺に発生する寄生容量であり、このCs1はCN2を介してトランスT1の誘導性出力Le1に接続され、Cs1,Cw1及び補助容量C12はLe1とともに直列共振回路を形成している。

その他の部分

1. R27,R25はトランスT1の寄生振動によってゼロ電流スイッチング回路が誤動作をすることを防ぐためのダンプ用抵抗である。
2. R21は寄生振動やノイズによってゼロ電流スイッチング回路が誤動作をすることを防ぐためのダンプ用抵抗である。
3. D1は二次巻線に発生する過電圧を検出するための直流電圧を生成する整流用ダイオードであり、整流された電圧はC13により平滑化される。
4. R9はC13に蓄電された電圧を放電するための放電用抵抗である。
5. C18は管電流検出回路の直流電圧を平滑化するためのコンデンサである。
6. R15はC18に蓄電された電圧を放電するための放電用抵抗である。


原告証拠説明書2

平成13年(ワ)第7153号  特許権に基づく差止請求事件   直送済

原告  株式会社テクノリウム
被告  富士電機イー・アイ・シー株式会社

証 拠 説 明 書 2(8/20)
平成13年8月  日


東京地方裁判所民事第29部 御中

原告訴訟代理人 弁護士  松 田  政 行

     同          早稲田  祐美子

     同          吉 羽  真一郎


号 証

標目
(原本・写しの別)

作 成
年月日

作成者

立 証 趣 旨

備考

甲6

証言書

H13.5.2

日本サンチップ株式会社社長陳耀堂

被告製品が、台湾AMBIT社→被告→日立製作所→Dell社へ流通していること。

甲7

電子メール

H13.4.11

Mark Kahler(米国Dell社)

被告製品が被告→日立製作所→Dell社へ流通していること。

甲8

[入門]電気磁気学(第2版)
p131〜p148
p171〜p177
p182〜p185
p192〜207
p230〜233

H12.2.1

松下昭
平井紀光

電気磁気に関する基礎理論(ソレノイド、ファラデーの法則、レンツの法則、トランス、自己インダクタンスと相互インダクタンス、電磁波の性質等)

甲9

電気回路
―その理論と演習による基礎的アプローチ−

H5.5.20

椎塚久雄

変圧器(トランス)およびインダクタンスについて。

甲10

図解
変圧器

H11.5.20

坪嶋茂彦羽田正弘

磁束の定義および漏れ磁束について。

甲11

コンパクト版電気工学ポケットブック

H8.3.25

電気学会

漏れ磁束、漏れ変圧器

甲12

高周波回路の設計・製作

H12.1.15

鈴木憲次

分布定数回路、進行波、反射波、定在波について

甲13

電子回路部品活用ハンドブック

H10.7.1

トランジスタ技術編集部

インダクタ、コイルの高周波数、ディレイ・ラインについて

甲14

特公昭63-5996

H63.2.6

特許庁

従来のリケージインダクタンスについて

甲15

特開平5-91740

H5.4.9

特許庁

従来のリケージインダクタンスについて

甲16

スミダ判定について

H13.7.9

原告代表者

スミダ製品が、LCD Panelを点灯した場合、大きく磁束が漏れることなど、スミダ判定についての反論

甲17

DELL社LATITUDE C600における液晶パネルにセットされている放電管用インバータ回路の測定について

H13.7.9

原告代表者

被告製品と同じ回路設計である放電管用インバータ回路を測定し、密結合・疎結合と二次側共振のあることの立証。

甲18

MP1010を使用したCCFLインバータの設計

H11.9

マイクロテック(株)マーケティング1部

DELL社LATITUDE C600に使用されているICが負荷に共振回路構成を取っていること。

甲20

公開特許公報

H7.8.11

特許庁

二次側回路に漏れインダクタンス(リケージインダクタンス)がある例

甲21

液晶パネル表示用インバータユニット

H12頃

TDK株式会社電子デバイス事業本部高周波部品事業部山田稔、木村隆一

液晶パネル表示用インバータユニット全体、及びそこに含まれる分布容量について。


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